2021.06.08 08:00

【総務省と業界】行政ゆがめた責任は重い

 東北新社の衛星放送事業の認定を取り消さなかった当時の対応は「行政をゆがめたとの指摘は免れない」と、総務省の第三者委員会の報告書は厳しく批判した。
 総務省が認定を取り消したのは、国会などで表面化した後の今年5月になってからだ。この問題を巡り、総務省は東北新社から外資規制違反の状態にあるとの報告は受けていないと反論し、当時の衛星・地域放送課長らは現時点でも報告について否定しているという。
 第三者委は、当時の課長は2017年8月に報告を受け、違反を認識した可能性が高いと指摘した。それにもかかわらず認定を取り消さず、子会社による事業承継を追認した可能性が高いと推察した。
 その背景を、認定事業者が少ない中、認定を受けた東北新社は貴重だったとの見方を示す。政策の推進に影響を与えないためには、認定を取り消さないことが適切であると考えたためだと判断した。
 一方、東北新社による総務省接待について、総務省が事業認定を取り消さなかった対応との関連性は確認できなかったとした。
 もちろんそのことで、接待が正当化される余地は全くないと主張する。その上で、会食で行政がゆがめられたという状況よりも根深い問題をはらむと危惧する。理由を付けてルールが守られないとすると、再発防止策も意味を持たなくなる。
 この指摘は重く受け止める必要がある。武田良太総務相は、監査体制の強化など再発防止に取り組む。もちろん制度づくりは大切だが、行政をゆがめても正当化を図ろうとする心理にまで踏み込まないと改善は期待できそうにない。
 報告書には、いらだちもうかがえる。東北新社側の説明が具体的だったのに対し、総務省職員の多くは、自らの業務に関わることでありながら「覚えていない」と繰り返したという。関連する文書・データの提出を求めると、存在してもおかしくないはずの記録が見当たらなかったりしたとも記している。
 資料の欠如により、結果として総務省が行った行政プロセスの正当性、公平性を証明できないことになる。こうしたことが委員会の判断に影響したようだ。記録を残さなければ何とでも言い逃れできるとでも思っているのではないかと、昨今の疑惑から連想してしまう。
 東北新社やNTTなどによる一連の幹部接待について、総務省は78件の違法接待を確認し、32人を処分したと発表した。東北新社以外からの違法接待はないとかつて国会で答弁した総務省幹部は、NTTとの会食が発覚した。国家公務員倫理規程がないがしろにされていることもさることながら、やり過ごせると高をくくっているのだろうかと疑う。
 第三者委はさらに、NTTの接待問題も検証して再発防止策を提言するという。東北新社の接待には菅義偉首相の長男も関わっている。首相への忖度(そんたく)がなかったか、さらに踏み込んでもらいたい。

カテゴリー: 社説

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