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2021.05.27 08:00

【強制着陸と拘束】ベラルーシの許せぬ蛮行

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 航空機の安全運航に重大な影響を与えかねない蛮行であり、報道への弾圧だ。強く非難する。
 ベラルーシ当局は、国際線旅客機を自国内に強制的に着陸させ、搭乗していた反政権派ジャーナリストを拘束した。早期解放と、国際機関による真相の究明を求める。
 アイルランド旅客機はギリシャからリトアニアに向かっていた。ルカシェンコ大統領が領空飛行中に強制着陸を命令した。
 拘束されたプロタセビッチ氏は、独立ネットメディア「Nexta」の創設者の一人という。独裁体制に批判的な報道をしてきた。
 ベラルーシ当局は、航空機に爆弾が仕掛けられたようだと通報し、軍用機を発進させて旅客機着陸まで誘導した。拘束後に機内を捜索したが、爆発物は見つからなかったと主張している。
 そうした発言をうのみにはできない。他国の主権を踏みにじる極めて悪質な行為だ。航空機の運航を自らの都合でゆがめることに、「国家によるハイジャック」との批判さえ上がっている。ベラルーシ空域の安全性は大きく揺らいだ。
 欧州連合(EU)は制裁強化を打ち出した。ベラルーシ国営航空などのEU各国上空の通過や、着陸を禁止した。またEU各国の航空各社に、ベラルーシ上空を飛ばないように求めるとする。
 経済が低迷するベラルーシには、領空通過料を得られなくなるのは大きな打撃となる。ほかにも経済制裁を検討するようだ。米国も対抗策をとることを明らかにしている。
 ルカシェンコ氏は権威主義的統治を続け、「欧州最後の独裁者」と称される。反大統領の抗議運動が巻き起こる中、昨年8月の大統領選では、政権に批判的な主要対抗馬を排除して6選を果たしている。
 選挙後も不正を訴える抗議デモが繰り返し行われ、多数が拘束された。一連のデモ活動に威力を発揮したのが、政権に批判的な独立メディアだったとされる。
 選挙不正にまつわる映像や、治安部隊によるデモ隊への暴力を発信し、デモの場所や時間を伝えた。プロタセビッチ氏は、テロ関与容疑で指名手配されていたという。
 政権はデモの再発阻止へ、独立メディアへの弾圧を強めている。無許可集会を中継することを禁止する改正法を、ルカシェンコ氏が承認したと伝えられた。
 拘束後、プロタセビッチ氏は、「大規模暴動」を組織した容疑を認めたとする映像が放映された。しかし、暴行を受けて虚偽の発言を強いられたと懸念されている。
 強制着陸と拘束に国際的な批判は強まる一方だ。政権の孤立が一段と深まっている。プロタセビッチ氏や、政権が拘束した政治犯の解放を通して事態の打開を図ることが求められる。ルカシェンコ氏は近くロシアを訪問し、プーチン大統領と会談するという。ロシアの支持を得たいのだろうが、それだけでは国内の安定にはつながらない。

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