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2021.05.17 08:00

【医療的ケア児】社会で成長を支えたい

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 今国会に超党派の議員立法として「医療的ケア児支援法案」が提出される見通しになった。
 医療の進歩によって、かつては救えなかった赤ちゃんの命を救えるようになった。新生児集中治療室(NICU)を退院し、自宅で生活するようになった後も、たんの吸引などのケアが欠かせない「医療的ケア児」は増えている。
 支援体制が整わず、保育施設や学校に通うことを断念しているケースも少なくない。看護している親の負担も重いなど、医療的ケア児と家族が直面している困難に目を向ける必要がある。
 医療的ケア児は全国に2万人いると推計され、この10年で2倍に増えている。自分で体を動かせない重症心身障害児から、歩ける子どもまで状況はさまざまだ。
 必要なケアも、胃に管を入れての栄養補給や、人工呼吸器の使用、気管切開部の管理など多岐にわたる。
 法案は、医療的ケア児の母親である自民党の野田聖子幹事長代行らの勉強会がまとめた。今国会で全会一致での成立を目指す。
 2016年の児童福祉法改正で、「医療的ケア児」は初めて法律に記され、支援体制を整えることが自治体の「努力義務」となった。
 提出予定の法案では、支援を「国及び地方公共団体の責務」と明文化している。保育所や学校などの設置者に対しては、適切なケアを行える看護師らの配置など必要な措置を講じるよう求めている。
 現状では、特別支援学校に通学する場合でも、医療的ケアに「対応できない」と判断され、親が登下校時はもちろん、授業中も付き添いを求められることが少なくない。親が離職せざるを得なかったり、通学そのものを諦めたりしている。
 国は、看護師らを配置する経費の補助など受け入れを促している。ただ、ケアに対応できる看護師や教職員の不足もあり、地域の保育所や学校に入りたくても多くの医療的ケア児が「門前払い」になっている。
 子どもが学びの機会を奪われている状態と言え、格差解消を急がねばならない。
 教職員の研修など人材の養成はもちろん、受け入れ側の意識改革も必要である。安全面を考えて及び腰になりがちだが、医療的ケアは機器なども進歩している。
 障害のある人と障害のない人が共に学ぶ「インクルーシブ教育」は、国が打ち出している方向性である。医療的ケア児の学びをどう実現させるかという姿勢で検討すべきだ。
 自宅と学校以外の居場所づくりも進めたい。国は施設での受け入れを促すため、4月から事業者への報酬単価を引き上げた。子どもの一時預かり先を増やし、見守りとケアにつきっきりの親が休息する時間を確保することは欠かせない。
 どの地域に住んでいても切れ目のない支援が受けられる体制を整えたい。医療的ケア児が自宅にこもるのではなく、さまざまな経験をして成長できるような社会を目指したい。

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