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2021.05.15 08:00

【ガザ空爆】報復は悲劇しか生まぬ

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 何度、悲劇を繰り返すのか。中東の地でまた、罪のない人々の血が流れている。
 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルに向けて千発を超えるロケット弾を発射し、イスラエル軍がガザを空爆している。戦闘が収まる気配はなく、被害の拡大が懸念される。
 第3次中東戦争の戦勝を祝う「エルサレムの日」の混乱を避けるため聖地で警戒中のイスラエル警察と、イスラム教の礼拝所に集まったパレスチナ人が衝突。パレスチナ人の投石に警察が催涙弾などで応酬し、300人を超える負傷者が出た。
 これをきっかけに戦闘に発展、双方で多くの犠牲者が出ている。イスラエル軍はハマスの軍事関連施設を攻撃したとするが、ガザは人口密集地だ。子どもを含めた死者が日に日に増えている。
 すでに戦闘は、ガザで約2250人、イスラエル側で約70人が死亡した2014年以降では最大規模になっている。変化する中東情勢が背景にあろう。
 イスラエルは20年に米トランプ政権の仲介で、対立していたアラブの4カ国と国交を正常化した。対パレスチナ強硬派のネタニヤフ首相が長期政権を敷いて交渉が途絶えたパレスチナ問題より、4カ国は米国との関係や大国イランから自国を守ることを優先した格好だ。
 パレスチナは孤立感を深めていたろう。自治政府は政治的な混乱で機能不全に陥っており、ハマスが衝突を利用して影響力の強化を狙った可能性がある。
 一方のイスラエルも、米国の政権交代でイランを敵視したトランプ政権のような擁護を期待できなくなった。国内でも約2年間で4回の総選挙を行い、連立交渉が続く混乱のさなかにある。対外的な強硬姿勢を誇示する必要があったに違いない。
 双方とも戦闘継続の姿勢を崩しておらず、イスラエル軍による地上侵攻も懸念されるが、これ以上の犠牲は避けなければならない。報復の応酬はさらなる悲劇しか生まない。国際社会は強く、自制と即時停戦を迫る必要がある。
 しかし、国際社会の足並みはそろっていない。国連安全保障理事会は声明発表など一致した対応をとれていない。米国が「緊張緩和に寄与しない」と主張したからだ。
 バイデン政権は1月の発足後、米国と欧州連合(EU)、国連、ロシアの4者が03年に示した和平案(ロードマップ)に基づき、パレスチナ国家樹立による「2国家共存」を支持し、トランプ政権下で削減したパレスチナ支援を復活させると表明していた。
 であるなら、具体的な行動でリーダーシップを示すべきだろう。米国以上にイスラエルに影響力を持つ国はない。米国を含めた4者による会合開催を探る動きもある。
 パレスチナ問題の前進抜きに中東に和平は訪れない。国際社会で改めて認識を共有し、交渉への環境を整えなければならない。

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