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2021.05.12 08:35

[県体2021] カヌー女子、たった一人の挑戦 カナディアンの福島さん(西土佐分校)

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3年連続で「カナディアンシングル」女子の部に出場する福島里穂さん(四万十市西土佐津野川)


「男女関係なく負けたくない」
 高校入学以来、女子ではたった一人の戦いを続けてきた。22日に開幕する県高校体育大会(県体)のカヌー競技で、女子カナディアンシングルに出場する中村高校西土佐分校3年、福島里穂さん(17)。県内には他にカナディアンの女子選手がおらず、男子と一緒に鍛えてきた。県体でも男女混合レースだが、「男子相手でも負けるのは嫌」とパドルを握る手に力を込める。

 清水中学校3年の夏、分校を訪れ、カヌー部を見学した。目に入ったのは、片膝を立て、パドルを力強く水面に突き立てるようにこぐカナディアンカヌー。「パドルをこぐ姿がかっこいい」と憧れ、入学を決意した。

 福島さんが高校に入学した年、全国高校総体女子の部にカナディアンが正式に加わることになり、影嶋まどか監督(44)から勧められ、本格的に取り組むことになった。
 
 座って乗るカヤックと比べ、カナディアンは安定性の確保が難しい。最初は何度も艇から落下。やっとのことでバランスが取れても、パドルをこげば左へ右へ。初めての県体は500メートルのゴールまで16分以上かかった。客席からの「大丈夫?」という雰囲気に「惨めで、すごくつらかった…」。

 それから猛練習が始まった。ほぼ毎週末、須崎市のカヌー場に通い、カナディアン専門の長井海斗・須崎総合高監督らの指導を受けた。男子と同じメニューにも弱音を吐かなかった。それは「男女関係なく、ただただ負けたくない気持ち」があったから。タイム短縮のため、毎日5、6キロのランニングや食事制限で、体重を30キロ以上落とす努力もした。

 新型コロナウイルス禍で十分な練習が積めずタイムが伸び悩み、心が折れそうな時は「自分を変えたくてカヌーを始めた」という原点に立ち返った。中学時代の陸上部では、厳しい練習から逃げていた。「そんな自分にさよならしたい。自分からカヌーを取れば何が残る?」。自問自答して持ち直した。

 影嶋監督に毎日提出する練習日誌には「○○ができなくて悔しかった」という言葉をよく記す。向上心は尽きず、女子一人の練習環境には「もう慣れた」と笑い飛ばす。最近はパドルで水をかく技術が上がり、成長を実感する日々だ。

 県体では男子7人と争う。出場するだけで女子の全国切符は手に入るが、「ベストを尽くし、男子を一人でも抜きたい」。初めての県体のような、一人だけ取り残されるレースをするつもりは、さらさらない。(谷川剛章)

高知のニュース 四万十市 県体 コラム

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