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2021.05.10 08:00

【赤木ファイル】真相解明へ全面開示を

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 森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書改ざん問題で、国側が「赤木ファイル」の存在を初めて認めた。
 自殺した同省近畿財務局の元職員、赤木俊夫さんが改ざんの過程を記録したとされる文書だ。赤木さんの妻が国などを相手取った訴訟で、証拠として提出を求めていた。
 国側は1年以上にわたり、ファイルの存否さえ明らかにしなかった。
 今後はどの範囲まで開示されるかが焦点になる。この問題は未解明な部分が残る。国側はファイルの内容を全面的に開示すべきだ。
 国側が存在を認めたのは、改ざんが時系列にまとめられた文書や、同省理財局と近畿財務局との間で送受信されたメールなどだ。
 6月23日の口頭弁論で開示する方針も示されたが、黒塗りだらけになる可能性もある。赤木さんの妻は「誰に何を言われて(改ざんを)やったのか明らかにしないと、夫が浮かばれない」と、黒塗りなしの開示を訴えている。
 森友問題は、近畿財務局が森友学園に国有地を異例の値引きをして売却したことに端を発している。
 安倍晋三前首相の妻、昭恵氏の関わりも浮上。国会で追及された安倍前首相は「私や妻が関係していたら首相も議員も辞める」と答弁した。
 財務省の調査報告書によれば、この後に森友学園との交渉記録が廃棄され、決裁文書の改ざんも始まった。当時の理財局長だった佐川宣寿元国税庁長官が方向性を決め、昭恵氏や政治家が関わる記述を削除するなど改ざんが進められた。
 ただ、報告書はあくまで内部の調査結果だ。具体的な指示の有無や改ざんの動機は判然としていない。
 一方、改ざんを強いられた赤木さんが書き残したファイルには、指示系統なども克明に記録されているとされ、元上司は「全部分かる」内容と証言している。
 重要な文書であるのは明白なのに、訴訟で国側は「存否を答える必要はない」と繰り返した。開示を決めた後も、財務省幹部は「原告の求めが抽象的だった。文書の特定に時間がかかった」と釈明した。隠蔽(いんぺい)を疑われても仕方のない対応だろう。
 今回、国が開示を決めたのは、大阪地裁が期限を設けて存否の回答を求めたことがきっかけだ。それがなければ開示されなかった可能性もある。国は情報公開に後ろ向きな姿勢を改めなければならない。裁判所はファイルの全面的な開示も働き掛けるべきだ。
 一連の国の対応を通して分かるのは、公務員が作成した文書は国民全体の財産であるという認識に欠けていることだ。
 財務省は改ざん発覚後「反省し再発防止を進める」としたが、過程を徹底的に検証することなしに、反省や再発防止が可能とは思えない。
 国には、職員が自殺した事実と真摯(しんし)に向き合い、誠実に対応する責務がある。問題の幕引きは許されない。国会もファイルの提出を求め、真相の究明を進める必要がある。

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