2021.05.09 08:38
東大女子、高知・日高村で生き生き 1年休学し協力隊員で夢探し
鵜飼唯香さん(21)。愛知県で生まれ、親の転勤のため首都圏や中国・上海で暮らした。上海ではインターナショナルスクールに通い、英語も堪能。「将来は官僚に」と幼いころから両親に言われ続け、東大に現役合格した。
エリートの卵に転機をもたらしたのは、新型コロナウイルス。大学3年の春から授業がオンラインとなり、家でずっと過ごす日々に「心が持たん」。就職活動も始まる中、知らない社会を見ようと思い立った。
協力隊の制度を活用するため、全国約30の自治体に片っ端から電話をかけた。「定住目的でないなら…」と断られることも多かったが、日高村は「えいがやない?」。懐の深さに引かれ、昨年12月に赴任した。
仕事は主にイベント運営。3月のドライブインシアターでは屋台を出す飲食業者との調整を担い、上映する映画も選んだ。1日目は家族で楽しめるアニメ、2日目はカップル向けにラブコメディー。2日目は客入りが初日の半分ほどに落ち、「楽しかったけど、力不足や責任を感じた」と振り返る。
豊かな自然、人の温かさは気に入っている。「村で働く人たちはみんな楽しそうで、肌つやがいい」と笑う。協力隊の任期は11月末。その先は「高知で就職してもいいかも…。考え中です」。
目標は一から自分で考えたイベントの開催。一方では自治体と協力して地域課題の解決を図る東大の事業を活用し、村に自分のような学生が活躍できる場をつくれないか模索している。
小さな村で夢が見つかるかは分からないが、大切なことはもう学んだ。「これまでは模範的なルートにとらわれていたなと。道を外れてみて、やりたいことをやっていいんだって思えるようになった」(楠瀬健太)