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2021.05.08 08:00

【緊急事態延長】ちぐはぐさが拭えない

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 「大型連休中に対策を短期集中で行う」(菅義偉首相)政府の戦略は当たらなかったと言えよう。
 新型コロナウイルス感染対策で、東京と関西の4都府県に発令している緊急事態宣言の延長が正式に決まった。対象に愛知、福岡両県を追加し、期間は5月31日までとした。併せて愛媛県などに適用中のまん延防止等重点措置も宮城県以外で同じ期間延長し、北海道と岐阜県、三重県にも拡大した。
 当初11日までだった期間設定は、専門家にも短すぎるとの指摘が根強かった。効果は限定的で新規感染者数は高止まりし、医療体制の逼迫(ひっぱく)状況にも改善がみられない。見通しの甘さは否めず、宣言の延長はやむを得まい。
 宣言下での具体的な対策方針も見直した。
 酒類を提供する飲食店には引き続き休業を要請する一方、生活必需品の売り場以外で休業を要請した大型商業施設は営業の時間短縮を基本とする。大規模イベントも原則無観客だったが、入場者を5千人か定員の50%までを上限に認めた。
 3回目となる今回の宣言では、従来の飛沫(ひまつ)感染対策に加え、人の流れの抑制を強化していた。延長に際して、人の流れへの対策を緩和した格好だ。
 しかし、関西圏で猛威を振るってきた変異株は、東京でも新規感染者の6割を超えた。宣言の対象である4都府県の新規感染者数は高水準のままで、入院調整中の患者も増えている。大阪府では重症者数が重症病床の数を上回り、医療体制の危機的な状況が続いている。
 効果がはっきりしない中、対策を緩める政府の姿勢に、中途半端な印象は拭えない。
 ちぐはぐさは重点措置の判断にも見て取れる。愛知、福岡の両県は知事の要請を超える宣言の対象としながら、適用を申請した徳島など3県は追加しなかった。
 適用地域を決める主体は首相である。とはいえ、地元の危機感を置き去りにする判断には疑問符が付く。法的根拠を欠いては難しい対処もある。宣言に至る前に機動的に対策を取るという重点措置の目的にも各県の要請は則していよう。
 菅首相は延長決定前、「人流は間違いなく減少した。効果が出始めているのではないか」と強調した。だが、宣言下で問われていたのは解除に値するような目に見える結果だったはずだ。
 確かに、人出は今回の宣言発令前より減ったが、1回目の宣言中だった昨春に比べ、全国的に人の流れはむしろ大幅に増えている。背景に対策の長期化による自粛疲れもあろうが、それだけではあるまい。
 政府の対応には経済活動へのダメージを懸念してか、後手に回るケースがみられる。東京五輪への配慮も透ける。それが対策全体として、国民へのメッセージを弱めていないか。広く国民の協力を求めるからには、十分な説明を通じて共感を得る姿勢が欠かせない。

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