2021.05.04 08:40
鍋島(山田高出)五輪届かず 陸上日本選手権1万メートル
男子(タイムレース)は参加標準記録を既に突破していた伊藤達彦(ホンダ)が27分33秒38で制し代表入り。2位は田沢廉、3位は鈴木芽吹(ともに駒大)だった。
女子は新谷仁美(積水化学)を含め代表3人が出そろった。男子は相沢晃(旭化成)が決定済みで残り1枠。
走りに迷い 前追えず 鍋島 5000メートルで再挑戦
この日も鍋島らしい走りを見せられなかった。驚異的な日本新記録を出した新谷(積水化学)に屈した昨年12月の日本選手権と同じように、序盤で先頭集団から引き離された。レース後、鍋島は「いろいろなことが整理できない」。心と体がバラバラになった走りに、本人も反省点すら見いだせない、厳しい結果になってしまった。
1万メートルで東京五輪出場切符を獲得するためのラストチャンス。順位に加え、好タイムを出さなくてはならなかったが、同僚の広中が引っ張る先頭集団に、2週目から後れを取ってしまう。遠ざかる背中を目で追いつつ、ギアを上げようとしても上げられない。「頭で分かっていても、体が付いてこない」。前方で好位置に付ける得意のレース展開に持ち込めなかった。
2年前、1万メートルと5000メートルの世界選手権切符を獲得しながら、脚を痛めて出場を辞退した。故障を克服する戦いが続いたこともあり、「この数年、自分らしい走りができていない」と調子を上げられない日々が続いた。
それでも昨シーズン後半からレースには復帰できていただけに、この数カ月は体の不調よりも、心の迷いが大きく影響していたようだ。
「練習ができて、精神的な面も充実した時に結果を出せる」と言う鍋島。ここ最近は自分を見失い、「どうやって走ってきたのかすら分からない。正直、今は光が見えない」と肩を落とした。
五輪代表権獲得のチャンスは、6月下旬に行われる日本選手権での5000メートルのみとなった。「今の自分にできることをやっていきたい」。懸命に前を向いた。(吉川博之)