2021.05.04 08:00

【がん治療と生活】「両立」容易にする支援を

 がんはかつて「死の病」と恐れられていたが、医療の進歩などによって生存率が向上している。
 国立がん研究センターは大規模な患者データから、2008年にがんと診断された人の10年後の生存率が59・4%だったと発表した。
 専門家は「治療技術は進んでおり、今後さらに生存率が改善する可能性がある」と指摘している。
 社会生活を続けながら、がんを治療する人も増えている。仕事や学業、育児、介護…。それぞれのケースでの両立が課題になっている。
 04~07年にがんと診断された人の10年生存率は58・3%で、今回発表された数字はこれを上回った。
 調査規模も04~07年の約9万4千人に対して、大きく上回る約23万8千人のデータから算出された。より正確に状況を反映しており、生存率の着実な改善が裏付けられた形だ。
 がんは早期に発見し、治療を始めるほど経過が良い。近年、がん検診を受ける人が増えたことも生存率アップに寄与している。
 同センターによる19年の推計値を見ると、市町村などで実施されている胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸(けい)がんの検診で、高知県の受診率は全国平均を超えている。
 とはいえ、その率は40~50%台だ。厚生労働省の統計では、高知県民の4人に1人はがんで亡くなっている。死因の第1位である状況を考えれば、今後もいっそう多くの受診を期待したい。
 新型コロナウイルスの感染拡大で検診控えも起きているが、がんの発見が遅れかねず、専門家は速やかに受けるよう呼び掛けている。
 がんと診断される人のうち、約3分の1が20~60代の働く世代である。医療技術の進歩で、働きながら治療できるケースは増えている。
 ただ、内閣府の世論調査によれば、仕事とがん治療の両立は困難と考えている人が6割近くに上る。通院しながら働く環境が整っていないと感じているからだ。
 仕事をやめてしまえば経済的な問題も出てくる。治療との両立が容易になるよう、国や企業は支援策を強化せねばならない。
 主治医ら医療側にも、患者の社会生活を大切にする姿勢が欠かせない。診断や治療に関する情報を十分に提供し、患者や家族らが判断材料にできるよう努める必要がある。
 また、「AYA世代」といわれる15~39歳のがん対策は遅れが指摘されている。子どもの場合、学業や将来の進路への影響のほか、思春期特有の悩みが重なることもある。
 20~39歳のがん患者は約8割を女性が占め、乳がんや子宮頸がんが多い。治療の影響で不妊になるリスクと向き合わざるを得ない人もいる。子育てと治療を両立しなければならない母親も多い。
 患者の家族がうつ状態になるケースも少なくない。個別のケースに応じて相談でき、安心して治療に臨める支援体制を構築するべきだ。
 がんと診断された後も、その人らしく生活できる社会を目指したい。

カテゴリー: 社説

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