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2021.05.02 08:00

【海外別姓婚判決】国内でも選択の自由を

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 選択的夫婦別姓制度を巡る議論が活発になっている中で、一石を投じる判決である。
 米国で別姓のまま結婚した日本人夫婦の婚姻関係は国内でも認められるのか。東京地裁は「有効」と認める初めての判断を示した。
 一方で、別姓での戸籍記載を求める夫婦側の請求は退けた。民法の規定で「夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を称する」と、夫婦同姓が義務付けられているためだ。
 婚姻は有効と認めながら、いわゆる「籍を入れる」ことは認めず、不合理を感じざるを得ない。夫婦別姓が許されないために起きる矛盾といえるだろう。
 原告は映画監督の想田和弘さんと映画プロデューサーの柏木規与子さん夫婦で、1997年に米ニューヨーク州で結婚した。2人は州法で同姓、別姓のどちらでも選択できたため、別姓婚を選んだ。
 2018年に東京都千代田区に別姓で婚姻届を提出したが、受理されず提訴に踏み切った。
 判決は、国側の「一つの姓を定めない婚姻は日本で成立しない」という主張を否定している。法の適用に関する通則法で「婚姻の方式は挙行地の法による」と定めており、米国で成立した婚姻は、姓を決定する前に「日本でも成立する」と認めた。
 原告は「実質的な勝訴」と喜んでいる。ただ、婚姻届が受理されない状況は解消されない。籍を入れ夫婦となることで認められる税控除や相続などの法的利益も受けられない。
 海外で多くの日本人が生活している時代であり、今後も起こりうるケースである。民法を改正し、結婚する人が同姓、別姓を自由に選べる選択的夫婦別姓制度を導入すれば、これらの不利益は解消できよう。
 今回の判決は、15年に夫婦同姓を定める民法の規定を「合憲」と判断した最高裁大法廷判決を踏襲している。合憲判断の際、最高裁は選択的夫婦別姓の是非は「国会で論じられるべきだ」と促してもいる。
 しかし、政府や国会は議論を進めてこなかった。自民党の保守層らが強く反対しており、昨年12月には政府の第5次男女共同参画基本計画から「選択的夫婦別姓」の文言が削除された。制度への理解が広がる世論と逆行する対応が続いてきた。
 ただ、今年に入り、自民党内の議論が活発になっている。推進派と反対派が議員連盟をそれぞれ発足させた。先月、党内で論点を整理する作業チームが初会合を開いている。
 強く意識されているのが、最高裁大法廷が年内にも改めて、民法の夫婦同姓規定への憲法判断を示す見通しであることだ。
 夫婦同姓を法律で義務付けている国は日本以外にないとされる。結婚や家族のあり方は多様化し、夫婦別姓の選択肢を求める声は切実だ。今回のように提訴に踏み切るケースも相次いでいる。
 最高裁が社会の変化をどう受け止めて判断するのか注目される。日本でも結婚する人が同姓、別姓を選択できる自由を認めるべきだ。

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