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2021.04.22 08:00

【元慰安婦判決】対立軟化へつなげたい

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 冷え込んだ日韓関係を改善させる糸口としたい判決だ。
 旧日本軍の元従軍慰安婦の女性らが日本政府に賠償を求めた訴訟は、韓国の裁判権が及ばないとして、ソウル中央地裁は訴えを却下した。
 国家は外国の裁判権に服さないとされる国際法上の「主権免除」の原則から導いた。この原則を適用し、請求は退けられるべきだとして訴訟への参加を拒否した日本政府の主張を受け入れた形だ。
 同種の訴訟で、同地裁は1月に賠償を命じる判決を出している。慰安婦動員は「反人道的犯罪行為」で、主権免除は適用できないとの判断を示した。日本政府は今回同様に訴訟への参加を拒み、控訴手続きも取らなかったため判決は確定した。判決の振れ具合は大きい。
 1月訴訟に絡み、同地裁は訴訟費用を確保する目的の日本政府資産差し押さえを認めない決定を出している。「国際法に違反する恐れがある」との懸念を示した。
 一方、日本が賠償支払いに応じないため、原告は賠償履行のために韓国内にある日本政府の差し押さえ可能な資産を探す手続きも申し立てた。だが、大使館などへの不可侵を定めたウィーン条約があり、実現は難しいとの見方が強い。
 近年、韓国の司法は植民地支配に絡む被害者の救済に前向きな対応を見せ、世論が支持してきた。2018年10月に最高裁が日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた。その後も類似の判断が続き、日本側は反発を強めてきた。
 文在寅(ムンジェイン)大統領は司法判断に関与しないとの立場だった。しかし対日外交が進展せず、元徴用工訴訟に絡む日本企業の資産売却には否定的な見解を示すようになった。元慰安婦訴訟の1月判決には「困惑している」とも述べている。
 文政権の姿勢の変化と今回の判決を直接結びつけることはできないが、これまでとは違った動きが出たことは間違いない。
 今回の判決は、慰安婦問題を巡る15年の日韓政府間合意は救済手段だったことを否定できず、今も有効だと指摘した。1月判決が、「政治的な合意があったことを宣言したにすぎない」と、国家間の約束を軽視する姿勢を示したこととは大きく異なっている。文氏も公式合意と認める考えを表明している。
 15年合意では、日本政府が慰安婦問題の責任を認め、慰安婦らを支援する財団に資金を拠出した。しかし文政権は財団を解散して合意をないがしろにしてきた。改めて「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した15年合意に立ち返り、被害者救済と日韓関係の改善を図りたい。
 慰安婦問題の解決は日本との外交交渉を含め、韓国の対内外的な努力により達成されなければならないと、今回の判決は述べている。極めて重要な指摘であり、日本外交の対応力も問われることになる。
 北朝鮮対応や地域の安定に日韓、日米韓の協力が欠かせない。日韓が緊張していては心もとない。

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