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2021.04.03 08:00

【デジタル法案】国民の安心へ説明尽くせ

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 菅義偉首相が看板政策に掲げるデジタル改革関連法案が衆院内閣委員会で可決された。来週には衆院を通過する見通しで、与党は月内の成立を目指している。
 関連法案は、改革の司令塔とするデジタル庁の設置を柱に個人情報保護法の見直し、マイナンバーと預貯金口座のひも付けを促すなどの60を超える法案で構成される。
 新型コロナウイルス対応で、国内ではデジタル化の遅れが一気に露呈した。特別定額給付金や雇用調整助成金の申請システムは混乱が続き、接触確認アプリ「COCOA(ココア)」の不具合も発生した。
 国民の利便性向上につながる改革ならば歓迎できる。しかし、個人情報の流出や、行政が個人情報を集積して管理を強める「監視社会」への不安は根強い。政権は個人情報保護の対策を徹底し、国民が安心できるデジタル化社会に向けて説明を尽くす必要がある。
 9月に発足する予定のデジタル庁は国の情報システムを統括し、他省への勧告権など強い権限を持たせる。これまで個別に整備されてきた自治体のシステムは、国がつくる基準に適合したシステムの利用を義務付けて標準化する。
 専門家からは、行政が保有する個人のデジタル情報を政府が独占する恐れがあり、「集中管理ゆえに、個人情報が漏えいすると影響は計り知れない」との懸念も出ている。
 監視社会化については、平井卓也デジタル改革担当相が「容認できない」と強調。個人情報保護委員会が行政機関を監督することで監視社会化を防ぎ、個人情報を適切に保護できるとの認識を示した。
 ただ、保護委が行政機関による乱用事例をチェックするための権限は指導、助言、勧告にとどまり、命令権限を規定していない。また、これまでの民間だけでなく国や全国の自治体も監督することになる保護委の体制強化も課題になろう。
 デジタル庁は、利便性の高いシステムを構築するため職員約500人のうち100人規模が民間出身になる方向だ。民間人材の登用で、特定の企業に都合のよいルールづくりや予算執行が行われるリスクも議論されている。透明性を確保する具体的な方法は今後の検討になるという。
 国会では、「誰ひとり取り残さないデジタル化」の実現も論点になっている。スマートフォンなどの機器に苦手意識を持つ人は高齢者だけではない。不公平感が生じないよう、分かりやすく安全に活用できる仕組みづくりが求められる。
 コロナ対応や相次ぐ政権内の不祥事で批判を受ける菅政権は、逆境の突破へデジタル改革の成果を急いでいるとされる。一方、関連法案の参考資料には45カ所のミスが見つかった。審議を急ぐ政権の姿勢が官僚の雑な作業につながっているとすれば、拙速さへの疑念も募る。
 国民一人一人のプライバシーや生活に関わる改革だ。政治的思惑に左右されることなく、国民の理解が深まる丁寧な説明と審議を求めたい。

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