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2021.03.28 08:00

【ウイグル弾圧】見過ごせない人権侵害

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 中国による新疆ウイグル自治区での人権侵害を巡って、欧州連合(EU)、米国、英国、カナダが制裁を発動した。弾圧を続ける中国の強硬な姿勢に対し、欧米が足並みをそろえ圧力によって状況を改善するよう迫った形だ。
 中国は猛反発し、EU関係者への制裁などで対抗した。欧米側は今後さらに圧力を強める構えで、欧米側と中国との間で緊張が高まるとみられる。
 中国の弾圧のきっかけは、漢族との対立が発端となり、約200人が死亡した2009年のウイグル族の大規模暴動にさかのぼる。「テロ対策」として強制収容を進めるなど人権抑圧を強めた。
 この後、17年ごろから強制収容がさらに広がった。国連人種差別撤廃委員会の報告書が収容者は100万人以上と推計したこともある。全体の状況が明らかではないが強制収容のほかにも、男女への強制不妊手術▽女性への中絶強制▽綿花収穫などでの強制労働―といった極めて悪質な人権侵害が伝えられている。
 罪を犯す恐れが本当にあったのか、嫌疑は十分に確認されたのかなどは不明のままである。「突然拘束され収容された」「有刺鉄線が張られた収容所内はトイレの中も監視される」など元収容者の証言を伝える報道もある。
 暴力で人権が踏みにじられることがあってはならない。欧米が圧力に踏み切った要因の一つとして人道上、見過ごせないという観点があったのは間違いない。
 ただ、中国は欧米に対し「内政干渉」だとする姿勢を崩していない。先ごろ、米・アンカレジで行われた米中高官会談でも、同地区や香港での弾圧に米が懸念を示すと、中国は「中国流の民主主義がある」「欧米のルールに基づく国際秩序には従わない」と強く反論している。
 中国共産党の一党独裁下で民主主義が機能するのか疑問は残るが、人権が尊重され自由が保障される国とはまた違った民主主義の捉え方があるのかもしれない。とはいえ、中国以外で通用するはずがない。
 欧米が発動した制裁には、世界の中の「強国」を目指す中国の覇権的な考え方に対して、結束を示そうとする狙いもうかがえる。中国も当然その点は計算に入れており、威信をかけて対抗するとみていいだろう。
 欧米側にはニュージーランド、中国と貿易などで緊張関係にあるオーストラリアも同調しているという。国際社会がさらに包囲網を強めて、本来のあるべき民主化を求め続けていくべきだ。
 日本政府は中国によるウイグル弾圧について欧米と同様、「懸念」を表明した。すると、中国政府は「歴史に触れざるを得ない」として歴史問題に言及し反発している。
 中国は最大の貿易相手国で習近平国家主席の国賓訪日という懸案もある。日本が米中の間でバランスを取らざるを得ない立場だとしても、ことは人道上の問題である。やはり厳しい姿勢をみせなければならない。

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