2025.11.05 05:00
小社会 世界津波の日

かつての勤務校は町内の小中学校の中で一番危険な場所にあった。海抜約5メートル、海からの直線距離は約65メートル。東日本大震災を機に年数回だった避難訓練を毎週1回に増やした。
訓練後のある時、眼下に広がる大海原が朝日に照らされ輝いている光景が目に飛び込んできた。そして気づいたという。「確かに自然の猛威は恐怖だが美しい。この場所に生きる子どもたちの故郷を否定しているのではないだろうか」。後にまとめられた詳細な報告書を読み、考えさせられた。
海を見ると落ち着く。潮の匂いが好き。浜辺が遊び場。県内には海が日常の存在である子は多い。だが海には恐ろしさも潜む。身近な自然とどう向き合うべきかは、単純な話ではない。
きょうは世界津波の日。国連が定めてから10年になる。この間、さまざまな地域で津波が起き、多くの人の命を奪った。先日は県内の新たな津波浸水の予測図も公表された。
先の校長は避難訓練時の講評の言葉を変えた。「避難訓練は自然と共に生きるための一つの習わしである」。穏やかな時もあれば、荒れ狂う時もある。大事なのは逃げること。海と一緒に生きていく強い決意を感じた。




















