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2025.01.28 08:55

藤井棋王の終盤力か、増田八段序盤勝負か 第50期棋王戦2/2高知市で第1局 高知新聞創刊120周年記念事業

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 将棋の藤井聡太棋王(22)=竜王・名人・王位・王座・王将・棋聖との七冠=に増田康宏八段(27)が挑む、第50期棋王戦コナミグループ杯(高知新聞社など主催、協賛社・大塚製薬)5番勝負が2月2日、高知市で開幕する。

 第1局は、同市九反田の市文化プラザ「かるぽーと」で指される。高知新聞創刊120周年記念事業の一環で、本県でのタイトル戦は2004年以来21年ぶり。

 将棋界のトップを走り続ける藤井棋王は、3連覇を目指す。挑戦者の増田八段はタイトル初挑戦での奪取を狙う。

 2人の対戦は今回で8度目。これまでは藤井棋王が6勝1敗としている。

 今度の対局では、どんな火花が散るのか。激戦が期待される。

【棋王戦5番勝負日程】
第1局 2月2日(日)高知市「文化プラザかるぽーと」
第2局 同22日(土)金沢市「北國新聞会館」
第3局 3月2日(日)新潟市「新潟グランドホテル」
第4局 同16日(日)栃木県日光市「日光きぬ川スパホテル三日月」
第5局 同26日(水)長野市「長野ホテル犀北館」


闘志を燃やす
増田康宏八段

増田康宏八段

 安定した強さを誇る若き王者に、増田八段がどのように挑むか注目だ。2017年、藤井棋王が最多の29連勝を達成したときの相手が増田八段だった。あれから7年以上がたち、増田八段は大きく成長を遂げた。

 棋士養成機関の奨励会では大器と呼ばれ、14年に16歳でプロ入り。16年には新人王戦で優勝するなどしたが、その後はそれほど目立った活躍はなかった。それでも努力を重ね、昨年、名人戦挑戦者を決める順位戦で最上位のA級に上り詰めた。

 今期の棋王戦本戦トーナメントでは安定した指し手を披露、7連勝でタイトル初挑戦を果たした。着実に実力を向上させ、棋王奪取に闘志を燃やす。センスの良い将棋で、「相掛かり」戦法を得意としている。

残る課題
藤井聡太棋王

藤井聡太棋王

 藤井棋王は23年、史上初の全八冠制覇を成し遂げ、しばらくは全てのタイトルを独占し続けると思われていた。だが、24年に叡王戦5番勝負で伊藤匠叡王に敗れ、全八冠から七冠へ後退。後手番になったときの戦型選択や作戦に苦労している面があり、「課題が残った」と振り返っている。

 失冠した藤井棋王だったが、その後は従来の力を見せた。棋聖戦と王位戦でそれぞれ5連覇を飾り、「永世棋聖」と「永世王位」という名誉ある称号を手にした。

 昨年10~12月の竜王戦7番勝負では、佐々木勇気八段を挑戦者に迎えた。佐々木八段の序盤戦術に苦しんだが、圧倒的な終盤力は健在。対戦成績4勝2敗で竜王戦4連覇を飾った。

 25年は棋王戦と並行して開催される王将戦7番勝負など、防衛戦を続けながら八冠復帰を目指す。

 これまでの両者の対戦成績は、藤井棋王が6勝1敗とリードしている。最新の戦法を得意とする藤井棋王に、増田八段がどのような戦型を用いるのか。

 増田八段は以前、人工知能(AI)を使って事前研究をしてきたが、昨年5月からトレーニング法を変えたという。AIを使うのをやめ、中盤、終盤を重視した勉強をしているという。

 藤井棋王の作戦に対抗するため、増田八段が序盤から定跡にない力勝負を挑む展開も予想される。棋王戦は1日制で持ち時間各4時間。目の離せないハイレベルな攻防が見られそうだ。

新鮮なシリーズに
 藤井聡太棋王の話 棋王戦は持ち時間4時間で、終盤に時間のない戦いになることが多い。残り時間が少ない状況でも、正確に指していけるかどうか。時間配分がポイントになってくる。昨年、第2局の金沢対局では能登半島地震の大変な状況の中で、準備していただいた。また伺えることを楽しみにしています。増田八段はタイトル初挑戦なので、自分にとっても新鮮なシリーズになる。事前にどんな戦いになるか予想しづらいので、柔軟に考えたい。良い将棋を指したいですね。

 ふじい・そうた 杉本昌隆八段門下。2016年、最年少の14歳2カ月でプロ入り。17年にデビューから無敗で最多の29連勝を成し遂げた。23年には初の全八冠独占。24年に叡王を失い、七冠となった。通算タイトル獲得は歴代6位の26期(竜王4、名人2、王位5、叡王3、王座2、棋王2、王将3、棋聖5)。愛知県瀬戸市出身。22歳。

自分の感覚信じる
 増田康宏八段の話 今回がタイトル初挑戦となりますが、ずっと目標にしてきたことなのですごくうれしいです。棋王戦本戦トーナメントでは集中して内容のいい対局ができた。自分はプロになって10年がたった。その中で試行錯誤し、努力してきたことが実を結んだと思っています。藤井棋王は隙がないし、全ての面で秀でている。実力差はあるが自分なりに工夫して接戦に持ち込み、最後までファンの方が見ていて面白い将棋にしたい。自分の感覚を信じて勝負しようと思います。

 ますだ・やすひろ 森下卓九段門下。2008年、大器といわれ、プロ棋士養成機関の奨励会に入会。最終関門の三段リーグを突破し、14年に16歳でプロ入りした。16年にはトップ棋士への登竜門として知られる新人王戦で初優勝を飾った。17年、新人王戦で2連覇を達成。名人挑戦者を決める順位戦は最上位のA級に在籍する。東京都出身。27歳。



 高知市で行われる棋王戦第1局の立会人を務める森雞二(けいじ)九段(78)=四万十市出身=に勝負の行方を展望してもらった。

かなりの接戦になる
森雞二 九段
 二人とも居飛車党で、いろいろな戦型を指しこなします。相掛かりになりそうかなと思うが、予想は難しいですね。

 これまでのデータを見れば、藤井棋王が有利。欠点がなかなか見つからない。増田八段には大変な相手ですが、チャンスはあります。どれだけ準備をしてきて、積極的に動くか。1局目を勝てるかどうかで、その後の勢いに大きく影響します。二人とも先手を取りたいと思うので、振り駒にも注目されます。

 持ち時間の配分も重要です。棋王戦の持ち時間は1人4時間で、序盤・中盤にあまり時間を使えない。時間を使い切って秒読みになると気持ちが焦り、ミスが出ることもあります。午後4~5時ごろの状況が大きな見どころでしょう。

 どちらが勝つにしても、かなりの接戦になると思います。私も藤井棋王のタイトル戦での立会人は初めて。楽しみにしています。

 ◇   ◇ 

 大盤解説の聞き手を担当する島井咲緒里女流二段(44)=南国市出身=に両対局者の印象や、楽しみにしている点を聞いた。

将棋熱の高まり期待
島井咲緒里 女流二段
 藤井棋王にはあいさつしたことがある程度ですが、テレビで映るイメージ通り、にこにこと柔らかい方。ロックバンドの「スピッツ」が好きだそうで「『魔女旅に出る』って曲がお好きなんですよね。私も移動中、聞いてきました」と話をしたら、笑顔で聞いてくれました。

 増田八段も幼い頃から天才と注目されてきただけに、ついにタイトル戦までたどり着いたか、という感じです。筋トレ好きで、筋肉ムキムキ。対局は体力勝負なので、がっしり調子を整えてくると思います。

 増田八段がどんな作戦を選び、藤井棋王がどう受けるのかに注目しています。

 解説者の一人、佐藤天彦九段はプライベートでも仲良しなんです。お話がとても上手なので、対局を盛り上げつつ、将棋界のいろんなお話も披露してくれると思います。

 県外から高知対局を見に来る方もたくさんいます。棋王戦を通じ、高知の将棋熱が高まればいいなと思っています。

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