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2024.05.22 05:00

【イラン大統領死】混迷を深めてはならない

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 中東の地域大国イランのライシ大統領がヘリコプターの墜落で死亡した。反米保守強硬派の最有力者の一人であり、予期せぬ不在で政情が不安定化する恐れがある。米国や周辺国も含めて、緊迫した事態を防ぐ取り組みが重要性を増す。
 ライシ師はヘリで移動中に山中に墜落。同乗していたアブドラヒアン外相らも亡くなった。国営メディアによると、原因は大雨や霧などの悪天候だという。
 イラン大統領は国政の最終決定権を持つ最高指導者の下で行政権をつかさどる。反米保守強硬路線の最高指導者ハメネイ師がいる限り、国家運営の大きな方向に変化はないとみられる。
 ただ、ライシ師が重要ポストを歴任してきたのはハメネイ師の後押しがあったとされ、最有力後継者と目されていた。ハメネイ師は現在84歳で後継を育てる時間は限られる。ライシ師の急死がイラン指導部に与える影響が小さいはずはあるまい。成り行きを注視する必要がある。
 当面、焦点になるのは6月28日に行われる大統領選挙だ。
 次期最高指導者もにらむ大統領選を巡っては、保守強硬派の候補による権力闘争が取り沙汰される。どういう展開になるにせよ、指導者の求心力の有無という点では厳しさも予想される。
 保守強硬路線そのものは変わらないとの見方が強いが、穏健派、改革派の動きが活発化する可能性も指摘される。
 ライシ師は、女性が髪を隠すヘジャブ(スカーフ)の着用義務に反対するデモを徹底弾圧するなど人権問題で強権的対応を繰り返してきた。核開発を受けた米国の制裁で、国民の間には経済情勢に対する不満もくすぶる。反体制の動きで指導部の基盤が揺らがないとも限らない。
 保守強硬路線に基づく人権弾圧や、核合意からの離脱の動きなどは当然認められないが、イランの政情不安の影響によって国際情勢の混迷がさらに深まることも避けなければならない。
 パレスチナ自治区ガザではイスラエル軍と、イランが後ろ盾のイスラム組織ハマスとの戦闘が続く。4月にはイランとイスラエルが直接攻撃し合う事態もあった。産油国のリスクは経済面でも影響が大きい。これらの不安定な状況に拍車がかかることを防ぐ必要がある。
 反米保守強硬派のライシ師だったが、米欧が全く取り付く島がなかったわけではなかったとも言われる。ガザ情勢を巡っては紛争拡大の回避に動くなど冷静な一面があり、中東地域でも孤立から脱しようと近隣国と関係改善を進めた。
 こうした姿勢は継続を求めたいが、選挙の結果次第では、さらに過激な「超保守強硬派」の大統領が生まれることもありうる。
 米側にはイラン対応の仕切り直しが求められる。イランと伝統的に友好的な関係を保っている日本も役割を果たし、中東情勢の平和と安定に貢献したい。

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