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2024.04.27 05:00

【日銀が政策維持】円安が生活にのしかかる

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 大幅な円安は輸入物価を一段と押し上げ、国民生活を苦しめる。緩和的な金融政策の影響を見定め、丁寧な説明が求められる。
 日銀は金融政策決定会合で、政策金利の誘導目標を現行のまま据え置くことを決めた。長期金利が急上昇するリスクに備え、国債購入を続ける方針も維持する。
 この決定内容を受け、東京外国為替市場で円相場は一時1ドル=157円に迫り、1990年5月以来、約34年ぶりの円安水準となった。心理的な節目とされる1ドル=155円を2日前に海外市場で突破した後も円安ドル高が進行している。
 日銀は景気を刺激するため、マイナス金利政策を柱とする大規模な金融緩和策を取り入れ、金利を極めて低い水準に抑えてきた。3月に、賃金と物価がそろって上昇する好循環になったと判断し、17年ぶりの利上げに踏み切った。
 植田和男総裁は解除後も緩和的な金融環境を続ける方針を示唆してきた。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は年内に3回利下げする意向だが、米経済の堅調さを示す指標の発表が相次ぎ、利下げを先送りする観測が強まっている。
 このため日米の金利差を意識したドル買い円売りが進んだ。植田氏は、円安が物価に無視できない影響を与えれば追加利上げに踏み切る考えを示し、そのタイミングに関心が集まっていた。今回の見送りで、日米金利差の開いた状態が当面続くとみた動きが強まった。
 これに対し、政府は円買い介入をにじませる発言を続け、市場をけん制している。政府・日銀による為替介入への警戒感は根強い。米経済の強さが背景にあるため介入効果は限定的との見方もある。状況を見極めた適切な対応が必要だ。
 植田氏は決定会合後の会見で、緩和的な金融環境が継続すると述べた。物価上昇率が予想通りに推移すれば追加利上げの理由になるとの認識を示した。利上げ時期を探る市場との対話は一段と重要になる。
 日銀は物価見通しを引き上げた。「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」は、2024年度の消費者物価上昇率は1月から上方修正して2・8%とした。25年度は1月時点から引き上げ、26年度とともに1・9%と見込んだ。賃金と物価が上がる好循環が期待される。
 賃金を巡っては、今春闘では大手企業を中心に賃上げ要求に満額回答が相次いだ。物価高を受けて政府が企業側に要請したほか、人手不足が深刻化して人材確保をにらんでの対応を迫られている。
 中小企業にも同様の動きは広がったが、賃上げ幅には差がある。原材料費の値上がり分を製品価格に転嫁できないとの指摘がある。対策の徹底や、非正規労働者の最低賃金の引き上げなど課題は多い。
 賃上げも継続して行われなければ暮らしへの打撃は大きくなる。中東緊迫化や円安進行で貿易は赤字基調からの脱却が見通せない。物価への目配りの重さが増している。

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