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2024.04.23 05:00

【海自ヘリ墜落】捜索と原因究明を急げ

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 不明者の捜索を急ぎたい。墜落の衝撃は大きい。徹底検証し、再発防止に取り組む必要がある。
 伊豆諸島の鳥島東方海域で、夜間訓練中の海上自衛隊のSH60K哨戒ヘリコプター2機が墜落した。搭乗していた計8人のうち1人の死亡が確認された。残る7人を海自や海上保安庁が捜索している。
 海自は事故調査委員会を設置し、同型機の訓練飛行を見合わせた。再開には原因究明が不可欠だ。
 訓練はヘリ6機と艦艇8隻で、潜水艦を探知する目的で行っていた。2機は別々の護衛艦から飛び立ち、午後10時38分ごろ1機の通信が途絶え、間もなくもう1機とも連絡が取れない状況だと分かった。
 周辺でヘリの回転翼のブレード(羽根)や機体の一部、ヘルメット数個が発見された。2機のフライトレコーダー(飛行記録装置)も回収されている。これまでの調べでは、飛行中の機体に異常を示すデータは得られていないという。状況から、2機は衝突した可能性が高いとみられている。
 潜水艦対処は海自の最重要任務に位置付けられる。潜ったまま航行する潜水艦は位置を把握することが難しい。敵潜水艦の脅威を排除するためには動向の把握が重要となる。
 このためSH60哨戒ヘリは、ホバリング中の機体からソナーを海中につり下げ、音波を出して潜水艦の位置を探る。正確な情報を得るため、護衛艦と連携しながら複数機で行うことになる。
 近接したヘリは互いに目視で位置を確認する。見通しが悪くなる夜間は、機体に取り付けられたライトでの判別を迫られる。機内には周囲のヘリの位置を表示し、接近を警報で知らせる機器も装備するが、操縦の難しさは格段に高まるという。
 実際、夜間訓練では同型ヘリの事故が相次ぐ。2017年8月には青森県沖の日本海で1機が墜落し、死者が出た。21年7月には鹿児島県・奄美大島沖で2機が接触する事故が起きている。
 海自は、複数の航空機が展開する現場では高度差を指示するなど再発防止策の徹底を打ち出してきた。高度を分離する措置がとられれば衝突の可能性は低くなるが、衝突したのであればそうした対応がとられていなかった疑いが強まる。当時の状況を明らかにすることが重要だ。
 日本周辺の安全保障環境が厳しさを増している。海洋進出を進める中国が潜水艦の増強を進め、台湾有事への警戒感も高まる。海自は日本の防衛への重要な任務に、対潜水艦戦の能力強化や周辺国の動向監視に取り組んでいる。
 ただ、中国への対処で任務が増加する中、訓練に十分な時間をかけられる状況にないとの指摘もある。それと事故との因果関係は明確ではないが、再発の防止にはこうした背景の分析も欠かせない。
 安保政策の転換や防衛費の大幅増額が、現場への過度の負担となっては防衛力に影響する。原因究明は多面的に進める必要がある。

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