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2024.02.25 08:00

【防衛費の増額】根拠と負担を説明せよ

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 2023年度から5年間の防衛費総額を約43兆円とする政府方針に対し、増額を探る動きが顕在化してきた。防衛力の抜本的強化に関する防衛省の有識者会議で、メンバーが増額の検討を提起。政府・与党で議論が活発になりそうだ。
 円安や物価高で防衛装備品の価格も高騰している。しかし、政府方針の43兆円でさえ具体的根拠は明確でなく、裏付けとなる財源も固まりきっていない。国民への説明も不十分だ。さらなる増額の検討とは、拙速に過ぎよう。
 日本周辺の安全保障環境が厳しさを増している。防衛力の強化は現実的な課題に違いない。ただ、政府は国会での十分な議論、それを通じた国民への説明も不足したまま、安保政策の転換に踏み切った。
 政府は22年12月、専守防衛の理念を形骸化させかねない反撃能力(敵基地攻撃能力)保有を明記した国家安全保障戦略など安保関連3文書を策定。これに伴って23~27年度に従来の水準より約17兆円を上積みし、総額約43兆円を投じて防衛力を強化する方針を決定した。
 23年度は22年度当初予算比で1・26倍と大幅に増額し、24年度予算案も過去最大となる7兆9千億円余りを計上。これまで国内総生産(GDP)比1%としてきた防衛費を、27年度には2%に倍増させる。
 政府は長射程ミサイルや航空機、艦艇などの調達数と大まかな経費を示したものの、43兆円の積み上げ根拠には不透明さが残る。「金額ありき」の印象は拭えない。
 さらに、財源も不明確といわざるを得ない。政府は27年度時点で1兆円強を法人、所得、たばこの3税を増税して賄うとするが、開始時期の決定を先送りしている。裏付けと国民の負担をあいまいにしながら、防衛力強化が先走っているといってよい。
 そうした状況でなぜ、さらに防衛費を増額する議論が降ってわいたのか。有識者会議での提起は、国民の反応をうかがう観測気球だったのではないか。
 財務省、防衛省は増額見直しをすぐに否定したものの、円安や物価高が重なったことで、必要な防衛力確保への懸念は政府や自民党、防衛省にも広がっている。見直しをタブー視せず、実効的な対応に向けた議論も必要ではあろう。ただし、まずは政府方針の43兆円の財源や負担について国民に説明を尽くし、理解を得るのが前提ではないか。
 円安や物価高は防衛装備品だけでなく、国民生活にこそ大きな影響を与えている。実質賃金は2年連続で減少し、税金や社会保険料の国民負担率も高止まりした状況だ。防衛費を再び増額するとなれば、国民は3税増税に加え、一層の負担を強いられることになろう。
 防衛力の増強には際限のない軍拡競争にもつながりかねないリスクもある。必要な防衛力と財源、国民負担の在り方など幅広い議論が不可欠だ。なし崩し的な防衛費の膨張は許されない。

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