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2024.02.23 08:00

【株価バブル超え】生活実感は厳しいままだ

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 長く低迷が続いた株価が大きな転機を迎えた。きのう日経平均株価がバブル経済期に付けた史上最高値を約34年ぶりに更新した。
 東京市場はこのところ、好調な企業業績を背景に輸出関連株や半導体関連株などが株高をけん引。きのうも米半導体大手エヌビディアの好決算が発表され、ハイテク株の買い注文が一段と膨らんだ。
 市場には急激な株高進行に警戒感があるが、税優遇が厚くなった新しい少額投資非課税制度(NISA)が1月から始まり、個人の投資資金も拡大。先高観が続いているといってよい。
 しかし、いまの株高は素直に喜べない面がある。株価は本来、経済を映す鏡だが、足元の経済は弱く、国民生活に好景気感は乏しい。
 むしろ物価高などで生活実感は厳しいままといえるだろう。政府も経済界も株高に浮かれることなく、現実を冷静に見詰め、経済対策をさらに進める必要がある。
 日経平均株価の史上最高値はこれまで、取引時間中、終値ともに1989年12月29日に記録。それぞれ3万8957円44銭と3万8915円87銭だった。
 きのうはそれらをいずれも180円以上上回り、取引時間中に一時、3万9156円97銭、終値で3万9098円68銭を記録した。その勢いに「4万円に向けて緩やかな上昇が続く」と見通す専門家もいる。
 株価上昇自体は歓迎すべきことだろう。企業の時価総額が上がり、企業価値が高まる。その結果、資金調達もしやすくなり、人材も集まる。投資家も潤う。
 ただ、いまの社会情勢は明らかにバブル期と異なる。
 賃金の上昇が物価上昇に追いつかず、実質賃金は低下。国民の多くが生活費を切り詰めて生活しているのが実情だ。少子高齢化が進み、人手不足も深刻になっている。先行き不安は大きい。
 経済指標にもそれが表れている。内閣府が発表した2023年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は2四半期連続のマイナス成長だった。23年の年間名目GDPはドイツに抜かれ、世界4位に転落した。物価高が家計を圧迫し、個人消費の不振が続いているのが大きな原因の一つという。
 円安効果や物価高を価格転嫁できた企業は業績も好調だが、全般には物価上昇に見合うほどの賃上げが実現されてない。中小企業の中には、人手不足や原材料費高騰で、苦しい経営を強いられているところも少なくない。
 このままでは富める企業や人と、そうでない企業や人との格差が広がる一方だ。個人や中小企業の犠牲の上に成り立つ株高は長続きもしないだろう。
 鈴木俊一金融担当相は史上最高値更新を受け、「企業の稼ぐ力の強化や、物価高に負けない賃金の実現に取り組んで、生活実感の向上を図る」と強調した。地力のある経済の実現が求められる。

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