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2024.02.19 08:00

【日本GDP4位】長引く停滞を映す転落

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 経済成長に力強さを欠いてきた結果だ。経済規模を測る一つの指標が国民の豊かさと直結するわけではないとはいえ、停滞が長引くようでは生活の底上げは望めない。要因を見極めた対処が求められる。
 2023年の国内総生産(GDP)速報値は、経済規模をそのまま表す名目GDPがドル換算でドイツに逆転され世界4位に転落した。
 名目GDPの金額自体は物価高に伴い過去最高を記録した。しかし、円安ドル高で目減りしたほか、ドイツの物価が日本を上回るペースで上昇したことが影響した。
 バブル経済の崩壊以降、日本は「失われた30年」と呼ばれる低成長に陥った。企業はリスク回避で設備投資を控えてリストラを進め、長引くデフレが足かせとなった。
 かつては「世界2位の経済大国」だったが、10年には中国に抜かれている。今後もインドなどに追い越されると予測される。ことさら順位にこだわる必要はないが、経済力の低下は存在感を低下させかねない。
 23年10~12月期のGDPは、物価変動を除く実質は年率換算で0・4%減だった。市場予想はプラス成長を見込んでいたが、マイナス成長が2四半期続いてしまった。
 内需が盛り上がっていない。個人消費は衣料や外食が落ち込み、3四半期連続で前期比マイナスとなった。設備投資も資材価格の高騰や人手不足が響いて減った。
 23年の消費支出も前年を下回った。幅広い食品への支出が落ち込んだ。教育費を切り詰める動きもみられる。物価上昇が暮らしを圧迫し、消費を控える状況を映し出す。
 物価高をはね返すには賃上げが鍵を握るが、物価変動を考慮した23年の実質賃金は前年比2・5%減と、2年連続のマイナスとなった。名目賃金は増えている。しかし、物価高騰に賃上げが追いついていない状況が続く。今春闘は賃上げに前向きな企業が多いものの、その持続性や中小、零細企業にどこまで波及するかが焦点となる。
 人口減少と高齢化で人手不足が深刻さを増している。需要が増えても人手が足りずに対応できず、成長を制約する場面が出ている。働きやすさの確保が不可欠だ。賃上げで人材を確保し、生産性を高めて賃上げを定着させる好循環が期待される。
 日銀の大規模な金融緩和策は円安につながり経済を下支えしたが、輸入物価を押し上げるなど弊害も目立つ。賃上げを伴う形で物価上昇率を2%に安定させる目標の達成が見通せれば緩和策の正常化へ動くとする。その時期や規模、金利の上昇による影響を注視する必要がある。
 東京株式市場の日経平均株価はバブル経済期に付けた過去最高値の更新をにらむ。海外勢がけん引するほか、少額投資非課税制度(NISA)が刷新されたことで個人投資家の取引が増えて資金が流入した。
 好調な企業業績を背景とした活況だが、景気の実感との隔たりは大きい。恩恵が広がるように多彩な取り組みが必要だ。

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