2024.02.10 08:00
【政治資金透明化】首相は踏み込む気概を
政治資金規正法改正に関し、首相は今国会で実現すると言明した。しかし、焦点の罰則強化や政治資金の透明性確保をどのように進めるのか明確な方針は示されていない。
規正法改正など必要な法整備は、自民党の政治刷新本部の中間報告にも見える。だが、透明化や厳格な責任体制に言及してはいても、それを確立するための具体策には触れていない。首相の発言もこうした範囲にとどまっている。
自民は政治資金収支報告書に不記載があった議員名と訂正額の一覧を提出した。野党は内容が不十分だと批判を強めている。自民の全国会議員を対象としたアンケートも、記載が漏れた理由や使途などは尋ねていない。形だけの取り組みではやる気を疑われても仕方がない。
首相が、最も事情を知る本人の説明が第一だと言うのはもっともだ。しかし、そうした動きにはならず、首相が指導力を発揮しているようにも見えない。
野党は政治浄化へ企業・団体の献金禁止を求める。これに対し首相は、「献金と政策が直結しているかのような言い方は当たらない」と反論する。また使途公開は、個人のプライバシーや企業団体の営業秘密を侵害すると否定的な認識を示した。主張の隔たりは鮮明だが、献金や政党交付金制度の在り方は重要な論点で、議論を深める必要がある。
自民の刷新本部の下に設置した三つの作業部会が事実上始動した。法整備やガバナンス強化などを担当する。政治家への罰則強化は、規正法改正ではなく党則改正で乗り切りたいようだ。議員が連帯責任を負うことを求める世論は7割を上回る。こうした見方をされていることを認識した上で対処しなければ、不信の解消は望めはしない。
首相は派閥の解散を打ち出し一部は同調した。派閥が「お金と人事のための集団」と見られても致し方ないとの認識を表明し、政策集団はそれと完全に決別するという。だが何で担保するのか示さなければ、派閥復活は繰り返されかねない。
裏金事件を巡る一連の問題の原因について、現行の法律ですら順守が徹底されていなかったことにあると中間報告は指摘した。さらに、問題が発生した際に説明がなかったことや、党として責任を持った対応が図られなかったことが国民の不信感を増幅させたとの見方を示す。
こうした反省があるのならば、改革に取り組む基本姿勢に反映されてしかるべきだろう。それを見せることが政治改革につながる。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側との関係を巡り、盛山正仁文部科学相は一貫性を欠く答弁を重ねている。裏金事件にとどまらず、その場しのぎの対応は許されない。