2024.02.08 08:00
【盛山氏と教団】被害者の信頼得られぬ
政府は旧統一教会を巡り、高額献金被害の訴えが相次いでいるとして、東京地裁に解散命令を請求している。責任者が教団と接点があるとなれば、被害者の疑念は膨らみ、対応の公正さにも疑問が生じよう。重責を担う資格が問われても仕方があるまい。
盛山氏は衆院選の公示前、教団の関連団体「世界平和連合」が神戸市で開いた会合に出席。その場で憲法改正のほか、LGBTや同性婚合法化への慎重な対応など教団側が掲げる政策への賛同を求めた推薦確認書に署名し、推薦状を受け取ったという。実際に選挙支援も受けたとされる。
当初は「覚えていない」としていたが、予算委で「写真があるのであれば推薦状を受け取ったのではないか」などと報道を事実と認めた。どこか人ごとのような対応には、多くの被害者や「宗教2世」らが関わる問題の重要性をどこまで理解しているのか、疑わざるを得ない。
政府は昨年10月、旧統一教会の解散命令を東京地裁に請求した。盛山氏はその判断を下した責任者である。今月下旬には地裁が教団側と文科省側の双方から意見を聴く審問が初めて予定され、これから係争が本格化する。
被害者救済でも責任は重い。解散命令前の財産監視を強める被害者救済法の運用でも文科相には慎重で厳格な対応が求められる。
たとえ言い分通り、教団との接点を失念していたとしても、なぜ就任時に確認もしなかったのか。政治家としての見識に疑問符が付こう。岸田文雄首相は盛山氏の更迭を否定したが、このままでは被害者らの信頼を得られるはずがない。岸田首相の任命責任も問われる。
盛山氏の責任はもちろん、安倍晋三元首相の銃撃事件以降、教団との関係に厳しい目を向けられながら、真相解明をなおざりにしてきた自民党の姿勢がこうした事態を招いたともいえる。
自民党は22年、所属議員180人に教団との接点があったと発表したが、調査は各議員の自己申告をまとめただけの極めて不十分な内容だった。教団との関係が政策に影響していなかったか、安倍元首相らの調査は実施されないままだ。
その後も山際大志郎経済再生担当相(当時)や岸田首相らに新たな接点が次々判明。盛山氏も関係団体の会合出席は認めていたものの、選挙支援や「政策協定」は認めていなかった。
自民党は政治資金パーティー裏金事件でも議員へのアンケートを実施しているが、身内の調査では公平性を担保できないことは明らかだ。不祥事のたび、お手盛りの対応でお茶を濁す体質を改める必要がある。