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2024.02.04 08:00

【政変から3年】民政ミャンマーへ復帰を

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 民意は民主化を支持したにもかかわらず、軍事政権による政情の不安定化で生活は混乱し、人道支援も停滞している。武力衝突は市民の犠牲を拡大させる。暴力を即時停止し、民政復帰への道を探るべきだ。
 ミャンマー国軍が民主政府を倒したクーデターから3年が経過した。人権団体によると、軍政の弾圧で4400人以上が死亡し、約2万人が拘束されている。国連は約260万人が避難民になったとする。
 国軍は2021年2月にクーデターで政権を転覆させた。民主派指導者アウンサンスーチー氏が率いた政権が勝利した20年秋の総選挙で、大規模な不正があったと主張した。
 民主化を求める市民の抗議デモに治安部隊が実力行使に及び、民主派からも武力闘争が打ち出されて混迷を深めた。スーチー氏は拘束され、非公開の裁判で汚職などの罪で有罪判決を言い渡された。国民や国際社会の批判をかわす思惑から刑期は減刑されたが、それでも計27年になる。早期解放が求められる。
 軍事政権は、クーデター後から続く非常事態宣言をさらに6カ月間延長すると発表した。選挙の実施期限は来年2月に先送りされた。
 宣言の延長は、各地で武装闘争が強まっていることが背景だ。昨年秋、中国国境に近い北東部で少数民族武装勢力が一斉蜂起した。インドと国境を接する北西部でも呼応する動きがあり、国軍の拠点陥落や投降が相次いだ。軍政を打倒するほどの地力があるかは疑問だが、国軍兵力の急減が伝えられるほどの勢いはあるようだ。
 軍政は民主派支持の武装組織や少数民族勢力が潜伏しているとして、市街地や村落への空爆や砲撃を継続する。兵士の中には、市民の犠牲が増えることへの嫌悪感が膨らんでいるとされる。軍政側は情報操作だと反論しているが、国軍に動揺があるとみて間違いはないだろう。
 ミンアウンフライン総司令官は求心力の低下が指摘される。自ら兼務する「首相」職の辞任など、統治体制を形式的に刷新するとの観測も浮上している。軍政の統治は大きく揺らいでいる。
 変化は外交面にも見られる。東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要会議に欠席を続けてきたミャンマー軍政は、先ごろ開かれた外相会議に外務省高官を派遣した。ASEANのクーデター非難に反発してきたが苦境が続き歩み寄った格好だ。
 会議では、ミャンマーに支援を届ける「人道回廊」構想をタイが主導し各国が支持した。情勢の改善が期待される。具体化は見通せないが、避難民への本格的な物資提供や搬送ルートの確立を急ぐ必要がある。
 ミャンマー高官はASEANとの関係正常化に前向きな姿勢を示したようだ。軍政への圧力を警戒する見方もあり進展は不透明だが、人道支援を通して融和を図る必要がある。地域の安定にも重要だ。
 日本の関与が欠かせない。歴史的なつながりも生かしながら対話への動きを確実なものとしたい。

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