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2024.02.01 08:00

【能登地震1カ月】先行き不安と向き合って

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 能登半島地震の発生から1カ月になる。被災の実態がまだ十分につかめないことが爪痕の大きさを物語る。一方で生活再建に向けた動きも出てきた。被災地ニーズと向き合った手厚い支援を続け、復興への道筋を着実に歩んでいきたい。
 最大震度7を観測した揺れは建物の倒壊や火災、津波などの被害をもたらした。死者は230人を超え、避難者は今も1万人を大きく上回る。
 土砂崩れや道路損壊で交通網が寸断された。津波の発生や相次ぐ余震、通信網の損傷などが初期対応を困難にした。半島という地理的条件の影響が指摘されるが、全国の沿岸部が受け止めるべき課題だろう。
 被害が広がった要因には、住宅の耐震化が進んでいなかったことが挙げられている。倒壊の下敷きとなった圧死が多い。過去の震災の教訓だったが、高齢化や費用の負担感が耐震補強をためらわせたようだ。再び課題を突きつけられた。新たな仕組みづくりを探る必要がある。
 孤立集落は実質的に解消したとはいえ、住宅被害は2万棟を超える。立ち入り禁止と判定される家屋も多い。寒さや衛生環境の悪化が関連死につながらないように、健康を守る取り組みの強化が求められる。
 一方、仮設住宅の建設が始まったが、用地確保などで十分な戸数を確保できる見通しが立たない。ホテルや旅館に設けられた2次避難所への入居も進んでいない。施設が被災地から遠く、また地元に戻れる時期が見通せないことが理由とされる。
 賃貸住宅を借り上げる「みなし仮設住宅」も、地元からの距離などで利用に二の足を踏むことがあるようだ。避難の長期化が想定される際には地域コミュニティー維持への視点が欠かせないことを示している。
 学校が再開される一方、学びの環境を確保するため中学生が集団避難した。親元を離れる不安は大きい。円滑な帰還には住居など生活環境の回復が前提となる。
 がれき撤去や損傷したライフラインの復旧が進むが、まだ時間がかかる。災害ごみの片付けや運搬も必要となる。生活再建へボランティアの受け入れが始まった。息の長い支援が欠かせない。
 住宅や工場、道路、水道などの被害額は、政府推計で石川、富山、新潟の3県で最大2兆6千億円程度に上る。地域経済への打撃も甚大だ。石川など4県の中小企業や小規模事業者の被害は数千億円に上るとみられ、さらに膨らむ可能性がある。
 伝統工芸や観光など地場産業の再建と雇用維持は重要だ。漁港では地殻変動で数メートル単位の隆起が生じ防波堤の外側まで陸地化したところがある。復旧には相当な年月と費用がかかるとみられ、離職も想定される。
 政府は被災地支援策を打ち出し、支援本部の設置を表明した。インフラ復旧や生活、なりわいの再生が滞れば人口流出が加速し、地域社会が維持できなくなる。先行き不安は大きい。目先の課題と向き合いつつ、復興へつながる中長期の複眼的な取り組みを重ねる必要がある。

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