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2023.12.29 08:00

【2023回顧(上)】国民感覚とずれる政治

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 問題に正面から向き合わず、場当たり的、その場しのぎの対応に終始する。それを国民に見透され、愛想を尽かされた―。岸田政権の2023年を一言で表せば、そのような年ではなかったか。
 典型的な事例が今秋打ち出した減税方針だ。岸田文雄首相は、物価高に苦しむ国民に増えた税収を還元すると訴えた。しかし、防衛力強化への増税方針などと矛盾し、内閣支持率が下がる中での人気取りと捉えられ、世論の反応は冷ややかだ。
 政策に定見や一貫性がうかがえない。こうした傾向は首相就任以来、見え隠れしていたといってよい。
 防衛力の抜本強化は決めたが、財源論や軍拡競争のリスク論は先送りした。運転期間延長を決めた原発も安全性の課題は棚上げした。「異次元」を掲げた少子化対策の財源は裏付けがない。アベノミクスを修正する「新しい資本主義」の理念はいつの間にか消えた。
 一方で「信頼と共感の政治」や「丁寧な説明」は強調する。ただ、その言葉は実践されず、今年も、疑問に正面から答えない国会軽視が続いた。持ち味とする「聞く力」は、政権維持のために有力派閥向けにだけ発揮されるとの皮肉も出る。
 このような姿勢で支持が得られると考えていたのなら、国民感覚とずれていると言われて当然だ。
 国民感覚とのずれは、自民党政治全体が抱える問題でもある。安倍派を中心とする派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題が、そのことを如実にさらけ出した。
 政治資金を透明化するという政治資金規正法の理念をないがしろにした悪質さは言わずもがなだが、政権幹部らが「捜査中」などを理由に説明を拒み続ける対応も、政治不信を膨らませる。
 首相は政治改革へ「火の玉」になるといい、党は政治改革の組織を設ける方針だが、これまでの対応からは、それも「その場しのぎ」ではないかと疑いの目が向く。結果で示さなければ信頼回復は見込めない。
 5月には先進7カ国(G7)広島サミットがあった。ウクライナのゼレンスキー大統領も電撃来日した。成否についてさまざまな総括はあるが、被爆地で「核なき世界」への理念を共有した意義は評価された。内閣支持率も持ち直した。
 しかしその後、支持率は続落する。物価高は確かに逆風になったが、マイナンバーカードを巡るトラブルなど国民目線を欠く事案が続いた。徳島・高知選挙区選出の自民参院議員だった高野光二郎氏の暴力事件と辞職もその一つになる。支持率下落の要因を直視しない限り、政権浮揚は難しい。
 「自民1強」が続いたことによるおごりは否定できない。自民が失点を重ねても支持が伸び悩む野党勢は改めて存在感が問われている。
 県内に目を転じれば、浜田省司知事が再選し、高知市長が岡﨑誠也氏から桑名龍吾氏に交代した。県民、高知市民の感覚とずれがない行政運営を心掛けてもらいたい。

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