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2023.12.23 08:00

【24年度予算案】歳出膨張に欠く財源論議

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 先送りできない課題に対応するのは当然で、そのための施策と予算は実効性が伴うのか十分に審議する必要がある。財政状況は厳しい。規模にとらわれていては信頼を大きく損なうことになる。
 政府の2024年度予算案は、一般会計の歳出(支出)総額は112兆717億円となった。前年度当初を12年ぶりに下回った。
 新型コロナウイルス禍で膨張した歳出を平時に戻していく政府方針に従って抑制を図ったように見えるが、それでも2年連続の110兆円超えで、過去2番目の規模になる。突然の出費に備える予備費を4兆円削減したことが大きく、方針が生かされているとは思えない。
 医療、介護など社会保障費と、防衛費は過去最大となった。歳出が最も多い社会保障費は高齢化に伴い37兆7193億円に膨らむ。社会保障費の抑制で少子化対策の財源を捻出する方針だが、思惑通りに進まなければ新たな負担が生じかねない。甘さを排除した設計が求められる。
 防衛費は7兆9496億円を計上した。政府は23年度から5年間で総額43兆円を投じる方針で、従来の水準より増額する17兆円を歳出改革や増税で賄うとする。だが、増税の開始時期は定まっていない。
 裏付け財源がないまま予算規模が先走りする状況だ。経済対策で打ち出した所得税と住民税の定額減税が24年6月から予定され、直後の増税は避けたいという政府、与党の思惑も指摘される。
 だが、今後の増税への警戒感は根強く、方針が定まらないことも内閣支持率の低迷と関連付けて語られる。安全保障環境が厳しくなる中、防衛の在り方への関心は高まっている。それにもかかわらず、十分な説明と議論がないまま方針決定してきたつけとも言えるだろう。
 国債の返済と利払いを合わせた国債費も最大となり、歳出の約4分の1が充てられる。金利上昇を踏まえ増額した。これから金利負担が重くのしかかりそうで、財政の一段の悪化への危機意識が高まる。
 予備費は新型コロナ禍が落ち着いていることなどから大幅に減額した。予備費が具体的な使途をあらかじめ定めないのは、災害への対応など資金を機動的に使うためだ。一方で国会の事前決議が必要なく、内閣の裁量で使い道が決められるため安易に使われる懸念がある。減額したとはいえ、厳格に対応できるように歯止めが必要だ。
 歳入(収入)の柱の税収は、69兆6080億円と過去最高を見積もる。消費税の税収が最高を更新し、定額減税による税収減をカバーするようだ。ただ、消費税分を押し上げたのは物価高が要因とされる。暮らし圧迫が映し出される。
 足りない歳入を賄うため、新たに発行する国債は34兆9490億円に上る。歳入全体の3割近くを占め、借金依存は変わらない。財政の硬直化で期待される施策が行えなければ国民生活の苦しさが増す。責任ある財政運営が求められる。

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