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2023.12.23 08:00

小社会 裁判官の「お言葉」

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 2004年12月、福岡高裁。ストーカー行為で罪に問われた30代女性に対し、有罪を言い渡した裁判長がこう諭した。「本当に人を愛するなら、自分の気持ちに忠実なだけではダメだ。相手の気持ちも考えなければ」

 「裁判官の爆笑お言葉集」(長嶺超輝(まさき)さん著)から引いた。裁判官といえばお堅い、機械的などの印象が強いが、生身の人間であり、法律論からはみ出た肉声が出ることもある。そんな事例を集めた同著は16年前の出版以来、40万部超のロングセラーだ。

 本の人気の源はやはり、人間味のある裁判官。この2人もそうなのだろうか。今週、注目の裁判で見過ごせない「お言葉」が続いた。

 一つは、沖縄県と国の基地を巡る訴訟。福岡高裁支部の裁判官は、基地負担の歴史から「沖縄の心情も十分理解できる。国は寄り添った政策を」と情を込めたが、沖縄の訴えは退けた。

 もう一つは、自死した職員も出た森友問題の訴訟で、文書改ざんを主導した元官僚が説明を求められている件。大阪高裁の裁判官は「道義的責任に基づき、誠意ある説明や謝罪があってしかるべきだ」とまで踏み込んだのに、法的義務を課すことは困難とした。

 多弁な裁判官たちはきっと根が優しい。だから敗者にも配慮する。自らの心も軽くする。だが理と情がかみ合わずに矛盾するだけなら、相手の神経を逆なですることもある。この二つの言葉で、救われた人はいるのだろうか。

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