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2023.10.22 08:00

【全銀システム】不具合検証で再発防止を

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 国内にあるほとんどの金融機関が接続する全国銀行データ通信システム(全銀システム)で発生した送金障害は、復旧までに約48時間を要し、企業や自治体の業務、市民生活に大きな混乱をもたらした。影響を受けた取引は506万件に上った。
 障害はシステムの更新作業に伴って発生。作業は今後も継続的に行われるため、再発の懸念が拭いきれない。作業手順や稼働テストといった対応は果たして適切だったのか。徹底的に検証して、再発防止策を講じる必要がある。
 全銀システムは、全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が運営。振り込み側と相手側の間で、データを受け取っては送る役割を果たす。メガバンクや地方銀行、信用金庫など千を超える金融機関が接続する「決済システムの中核」とされる。他行宛ての振り込みは2022年12月の平均で1日当たり875万件、約14兆円に達する。
 不具合があったのは、全銀システムと金融機関をつなぐ「中継コンピューター」。新機種に更新するため、29年にかけて金融機関ごとに24回予定される作業の第1陣が行われた。
 翌日になって、三菱UFJ銀行やりそな銀行、商工中金を含めた10の金融機関で、全銀システムに接続できないトラブルを検知。他行宛ての振り込みが遅れるトラブルが発生した。
 このため金融機関によっては、振り込みの受付時間を制限したり、停止したりする事態に追い込まれた。一部の自治体では児童手当の振り込みが遅れ、生命保険や損害保険などの支払いにも支障が出た。
 原因は確定してはいないものの、銀行間手数料を処理する過程で、データの破損を確認した。処理に必要な容量の不足が一因との見方も出ている。
 全銀システムは1973年に稼働して以来、大規模な障害を起こしたことはなかったという。トラブルのリスクがある作業にもかかわらず、その信頼性ゆえに全銀ネットにも金融機関側にも油断があったのではないか。
 今回、東京と大阪にある拠点で同時に更新を実施したが、別々に作業していれば、代替機能が作動して、顧客への影響を回避できた可能性もあったという。復旧作業にも手間取って、さらに傷口を広げた。
 トラブルに伴い、顧客に生じた手数料や延滞金などの損害は各金融機関が補償するとはいえ、今後の作業で同様の事態を起こさないことが極めて重要だ。
 経済活動における金融サービスは体にとっての血液循環に等しい。トラブルがいったん発生すれば、その影響は広範囲に及んでしまう。
 一連の更新作業で不具合が頻発することにでもなれば、決済や金融のシステムそのものへの信頼が揺らぎかねない。次の作業に向け、手順やテストの在り方、トラブル発生時の対応などを徹底的に検証することが不可欠だ。

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