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2023.10.21 08:00

【参院1票の格差】国会の怠慢は許されない

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 高知県などに隣県との合区導入を決めた2015年、改正公選法の付則には19年参院選までに「抜本的見直しについて必ず結論を得る」と明記された。国会は本質的な議論を放置し続けてはならない。
 「1票の格差」が最大3・03倍だった昨年7月の参院選は違憲として二つの弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷は格差を合憲と判断した。
 最高裁は、格差が4・77倍だった13年選挙を違憲状態と判断。都道府県単位の選挙区を見直すべきだと迫った。これを受けて「鳥取・島根」「徳島・高知」の2合区が導入された16年の選挙以降、3回の参院選は3倍程度で推移。いずれも合憲と判断されたことになる。
 とはいえ、合区による格差縮小を前提とする合憲判断が出るたびに、対象県では懸念が高まっている側面も否めない。本県の浜田省司知事も判決を受け、「合区を固定化してほしくない」と述べている。
 むろん、格差の是正は憲法の「法の下の平等」が求める投票価値の平等に基づく。それは民主主義の根幹をなす選挙制度の大前提である。
 ただ、最高裁判決も今回初めて言及したが、合区選挙には民意をすくい取る上で問題点がある。過去3回の参院選で、対象4県の有権者は当事者としてそれを実感してきた。
 候補者は広大な選挙区を十分に回れず、有権者と接する機会は減っている。行政や情報基盤が県単位で分かれる現実の下、有権者は他県を地盤とする候補者になじみが薄く、選挙への関心は高まらない。
 地方の議席が減り、疲弊する地方の実情が国会論議に反映されにくくなるという懸念も根強い。
 制度のゆがみは、4県の低投票率や無効票の増加が証明している。あす投開票される参院徳島・高知選挙区補欠選挙でも、自県から候補者が出た高知と、出ていない徳島の有権者の関心度には大きな開きがあり、低投票率が懸念されている。
 1票の格差とは別の意味で「質的な不平等」が生じ、選挙離れが加速している。これも民主主義の根幹に影響するのではないか。
 抜本的な見直しを約束したはずの国会の動きは鈍い。
 合区はそもそも緊急避難的措置とされた弥縫(びほう)策である。自民党は19年選挙で、候補者を出せなかった対象県の代表を比例代表で救済する特定枠を導入。取り繕いに取り繕いを重ねていると言わざるを得ない。
 参院は本来、衆院の数の暴走を抑止する「良識の府」としての機能が期待される。任期6年で解散もないため、多角的、長期的な視点での議論も可能なはずだ。
 小手先の数合わせではなく、参院の独自性をどう立て直すかという本質的な議論を深める必要がある。その上で改憲や、法改正といった手法を選択していくべきである。
 昨年秋に初会合を開いた参院改革協議会の議論も、各党の党利党略が絡み、停滞感が強い。国会のこれ以上の怠慢は許されない。

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