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2023.10.12 08:00

小社会 ガザの人々

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 パレスチナ自治区ガザを舞台にした2015年の映画に「ガザの美容室」がある。戦闘が続く極限状態の町。そこに暮らす女性たちの苦悩を、美容室という空間から描いていて興味深い。
 銃を手にした男たちが通りを行き交う中、女性たちはおしゃれをしようと、店に集まる。平凡な日常への強い欲求か、それとも戦争に明け暮れる男たちへの抵抗か。
 店でこぼす男や政治への不満から、客それぞれの疲弊した人生も浮かび上がる。そんな中、町で激しい戦闘が発生。店に取り残された客たちもいら立ち、取っ組み合いを始めてしまう。店主が叫ぶ。「やめて! 外の男たちと同じじゃないの」
 流血場面はなく、いわゆる戦争映画とは一線を画す。それでも胸を締め付けられる。強い戦争批判も伝わってくる。イスラエルと歴史的な対立があるにしても、市民が望むのはやはり穏やかな人生だ。
 ガザを支配するイスラム組織ハマスとイスラエルが激しい戦闘状態に陥り、双方に多くの死者が出ている。ハマスによる突然の攻撃は許されるものではない。その意図が何であっても、多くのガザ市民は戦争など望んではいないだろう。
 映画の監督はガザ出身のタルザン・ナサール、アラブ・ナサール兄弟。2人はかつて、戦闘の死者ばかり注目される中、自分たちは「ガザの人々の人生を描かなきゃならない」と述べている。生きていくのも重く、つらい。それが戦争である。

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