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2023.09.30 05:00

【県内地質談合】「必要悪」は通用しない

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 公共事業の受注を巡って続いた悪弊が、また断罪された。高知県発注の地質調査業務の入札で行われていた談合を公正取引委員会が独禁法違反と認定し、参加業者に排除措置と課徴金の納付を命じた。
 業界には、談合による受注調整を「共存共栄のため」「必要悪」とする意見もある。だが、税金の不要な支出につながる行為の正当化は、県民には通用するまい。責任を問われるのは当然だ。なれ合いの構造では業界の成長も望めないだろう。体質の刷新が求められる。
 この談合疑惑を巡っては、公取委が事業者1社から報告を受け、調査を進めていた。
 公取委によると、県内の測量会社など14社は、県発注の地質調査業務で談合を繰り返し、2017年から3年半余りの間に発注された703件の9割以上を落札。受注額は計約30億円に上った。
 この期間の落札価格は高止まりしており、適正な入札が行われた場合より3億円多く公金が支払われたと試算される。本紙の取材に対し、談合は長年の慣行と証言する業者もおり、緻密に練り上げられた手口からもその可能性は高いだろう。そうだとすれば、県民が受けてきた不利益の総額は桁が違ってくる。
 今回見過ごせないのは、地質調査業界ともつながりの強い県内の土木建設業が、業界挙げてコンプライアンス(法令順守)の確立を掲げていた中で談合が行われたことだ。
 高知県では12年、国土交通省と県の発注工事を巡る官製談合事件があり、37社に総額約17億5千万円の課徴金納付と排除措置が命じられ、県と国の指名停止処分も受けた。
 官製談合事件は県内政財界を大きく揺るがし、これを機に業界は研修会の開催などコンプライアンス確立への取り組みを強化した。だが、地質調査業界ではそれと逆行する行為が繰り返されていたことになる。悪質だと言わざるを得ない。
 発注者の県の責任も浮かび上がる。業者側は談合を行った背景として、現状の入札制度では最低制限価格で複数社が並んでくじ引きになることが多く、仕事量や経営環境が見通しにくいことを挙げる。その面は否定できない。
 県は今回の談合疑惑を受け、委託業務入札への総合評価方式の導入や罰則強化など再発防止策を検討しているが、既に多くの県が対応済みだという。官製談合を経験したことを踏まえれば、後手に回っていると言われても仕方あるまい。
 官製談合の際、県は地域経済への打撃を考慮し、業者の指名停止処分の期間を短縮した。談合の土壌を残すのではないかという反対意見もあった。処分軽減によって、業者らが談合と向き合う意識を緩めた面はなかったのだろうか。
 県は近く、今回の違反業者を指名停止処分にする方針だ。浜田省司知事は「厳正な処分を貫く」とするが、処分するだけでなく、再発防止のこれまでの取り組みが機能してきたのか、振り返る必要がある。

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