2024年 05月06日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2023.09.29 08:45

「談合は昭和からだ」 高知県地質談合で社長ら「やめられなかった」

SHARE

独占禁止法違反の処分説明を受けるために集まった地質調査業者ら(28日午前9時50分ごろ、高知市本町4丁目の県民文化ホール)

独占禁止法違反の処分説明を受けるために集まった地質調査業者ら(28日午前9時50分ごろ、高知市本町4丁目の県民文化ホール)

 公正取引委員会による突然の一斉立ち入り検査から11カ月。28日、県発注の地質調査業務で談合を繰り返していた業者に処分が下った。本紙取材に「再発防止を徹底する」と反省を示す社長がいる一方、「話すことはない」と口をつぐむ業者も。「談合は昭和からだ」と、業界ぐるみの長年の慣行だったという証言も漏れてきた。

■高知県地質談合8600万円課徴、公取委命令 14社で30億円受注

 午前10時前の高知市中心部。野菜や漬物が並ぶ木曜市のにぎわいを横目に、スーツや作業着姿の各社幹部が、県民文化ホールの会議室に消えていった。

 業者はここで公取委から処分内容や、談合を根絶する排除措置の手続きなどの説明を受けた。公取委はその後、記者会見を開き、業者間で取り決めていた巧妙な談合手順などを発表した。

■「申し訳ない」
 地質調査は、トンネルや橋などのインフラ整備や災害復旧工事など、「地面に物を造る」際には欠かせない。阪神大震災や東日本大震災、頻発する豪雨災害などは業界の追い風となってきた。

 公取委が今回認定した談合メンバーには、地質調査を主業務に据える社と、測量設計などを軸としつつ地質調査にも参入した社が混在している。

 四国地質調査業協会の高知支部長を務める四国トライ(高知市)の松尾俊明社長は「処分を真摯(しんし)に受け止める。深く反省している」と声を絞り出した。

 地研(同)の中根久幸社長は「重く受け止め、悪い因習から抜け出す」と宣言。ムクタ工業(大豊町)の椋田新也社長も「県民や県関係者に申し訳ない。法令順守を徹底する」と謝罪した。

 測量・設計業務などを中心に手がける第一コンサルタンツ(高知市)の右城猛社長は「法令違反をしたことは間違いない。処分は甘んじて受ける」と話した。

■「取ってなんぼ」
 談合発覚のきっかけは、県内大手で受注調整の幹事役も務めた「相愛」(同)による公取委への「自主報告」だった。

 永野敬典社長は「約20年前の地質調査の会合で談合を知った。談合を続けたことを反省している」と振り返る。2012年の土木業界の官製談合事件がありながら、地質業界の危機意識は高まらなかったという。

 公取委が認定した談合期間は17年4月~20年11月。しかし複数の関係者は、取材に対し「昭和の時代からあったようだ」と明かす。近年の実務を担う担当者らにとっては入社時からの慣例で、業務の一部として定着していたという。

 「談合の現場にいる営業マンは、仕事を取ってなんぼ。談合をやめるべきだと思っても言い出せない。正論を吐いて『取れませんでした』では済まない」

 「談合は当たり前と感じていて、12年の官製談合事件で初めて、いけないと認識した。もっと早くやめたかったけど、つまはじきにされるのも怖くて抵抗はできなかった」

 こうした本音は、業界のあちこちから聞こえる。談合は「必要悪」との認識も根強い。

 あるベテラン社員は違反の重大性を認識しつつも、「会社の安定経営はもちろん、最も大切な技術力を高めるには、できるだけ多くの仕事を取るしかない」。別業者の役員は「談合と言うと、金のネックレスをした悪人の印象かもしれないが、違う。不調不落を避けて、必要な業務をふさわしい業者が受ける工夫でもあったと思う」とする。

 ある社長は現行の指名競争入札を批判する。複数の社が最低制限価格で並び、くじ引きによる落札者決定が相次ぐ現状に、「価格競争による入札では利益がほとんど残らない。『談合してください』と言っているような制度だ」と持論を展開した。

 反省と謝罪。それを上回る業界の事情が渦巻く。正常化の道は遠い。(報道部取材班)

この記事の続きをご覧になるには登録もしくはログインが必要です。

高知のニュース 高知の企業 不正・不祥事 行政

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月