2023.08.12 08:00
【自転車に青切符】マナー見直しにつなげよ
本来、交通安全はマナーによるところが大きい。罰則が先行する対応は望ましいとはいえないものの、自転車が絡む重大事故が後を絶たない現状も放置はできない。専用通行帯などの環境整備や交通安全教育の充実も進め、ルール順守の意識を高めたい。
自動車やバイクを運転している時に比べ、自転車では交通ルールへの意識が緩んでいる人も実際に多いのではないか。免許の有無に関係なく、子どものころから親しんだ気軽さもあるかもしれない。
ただ、自転車は道交法上の「軽車両」で、人によっては原動機付自転車に近いような速度を出せる乗り物だ。日本では専用通行帯の整備が遅れ、歩道で人の近くを走らざるを得ない状況もある。歩行者優先のマナーを欠けば、事故の「加害者」になりかねないことを十分に認識しておく必要がある。
警察庁によると、交通事故の総数が大きく減る中、自転車が絡む事故は減少ペースが鈍く、事故全体に占める割合は2013年の19・2%から22年には23・3%に高まった。自転車が当事者になった死亡・重傷事故のうち、約7割で自転車側にも違反が見つかっている。
健康志向の高まりや、新型コロナウイルス禍で「密」を避ける傾向が強まり、自転車のニーズは高まっている。その分、悪質な運転も増えたのだろう。自転車の交通違反摘発も22年は13年の約3・4倍になっている。何らかの対策が必要なのは確かではないか。
自転車の違反取り締まりでは警察官が摘発の必要があると判断した場合、主に交通切符(赤切符)を交付している。運転免許の有無は関係なく刑事処分となり、原則的に検察庁に書類送検される。
起訴を見据えた捜査が必要となるため時間がかかる上、裁判所で違反が確定すると罰則が適用されて前科となってしまうため、ほぼ起訴されていないのが実情。軽微な違反は、サッカーのイエローカードのような「指導警告票」で注意喚起しているが、実効性には限界があった。
青切符は行政手続きとして反則金の納付を通告し、違反者が納付すれば起訴されず、納付しない場合に刑事手続きが進む制度。警察庁は、自転車が対象になれば、反則金によって実効性のある取り締まりが可能だとみているのだろう。
青切符の対象となる年齢や罰則金額といった運用の詳細は、有識者検討会の議論や法案化の段階で具体化されていくことになる。身近な乗り物だけに反則金導入には反発も予想される。利用者を罰則で抑え込む発想ではなく、交通マナーの向上を促す視点が欠かせない。