2024年 05月06日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2023.08.09 08:00

小社会 長崎原爆忌

SHARE

 漫画家の西山進さんが、長崎の爆心地周辺に入ったのは原爆投下の翌日だった。造船所で少年工をしていて閃光(せんこう)と爆風を浴びたが、命拾い。仲間と救援活動に向かったという。

 そこで少年たちが見たのはまさに地獄絵の光景だった。焼け野原になった町のそこここに死体があり、焼けただれた負傷者がいた。

 電信柱のそばで「焼けぼっ杭(くい)のようになった」子どもたちの死体を見つけた。1人は手で目を覆ったままの姿で、かくれんぼでもしていたのかと思ったが、後で気付いたという。「ピカーと光った瞬間子どもたちは目を覆い、そのまま何万度という熱線にあぶられた」と(作品集「おり鶴さん」)。

 被爆者は戦後長く、重い後遺症や凄惨(せいさん)な現場の記憶に苦しんできた。そして多くの人が一貫して反戦反核を強く訴えてきた。子や孫、世界の人々をあの惨状にさらしてはいけないと、心底思うからだろう。

 西山さんはそんな被爆者の戦後を4こま漫画にした。被爆者の闘いを描いたといってもいいだろう。平和への主張や運動はもちろん、非核化に背を向ける国内外の政治家への批判も。

 「現役最後の被爆者漫画家」といわれた西山さんは被爆者団体の月刊紙に2021年5月まで作品を掲載。昨年秋94歳で亡くなった。高齢化する被爆者はいつ闘いを終えられるのだろうか。きょうは長崎の78回目の原爆忌。鎮魂と一日も早い核なき世界の実現を願う。

高知のニュース 小社会

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月