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2023.08.09 08:00

【マイナ保険証】一本化への疑念が膨らむ

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 マイナンバーカードに保険証機能を持たせたマイナ保険証に、別人の医療情報をひも付けるミスが新たに千件余り確認されるなど、情報の不適切なひも付け作業が数多く明らかになった。政府が総点検の中間報告を公表した。
 岸田文雄首相は原則として11月末までに個別データの点検を実施するように指示した。秋までとしてきた時期が具体化した。想定より先送りして慎重を期したと見ることもできるが、重要なのは確実な点検であり、ミスを繰り返さないことだ。
 個人情報をひも付ける際の本人確認の手順が不十分だった事務のうち、公金受取口座などは全数を対象に点検する。実務を担う市町村では、負担の増大や通常業務への影響を危惧する声が上がる。トラブルは手作業による入力ミスで多発した。チェックの仕組みの甘さも指摘される。それへの手当てがなければ業務の確実性が失われかねない。
 7月の世論調査では、7割強が総点検で問題は解決しないと考えている。デジタル化のメリットを行き渡らせたいのであれば、国民の不安払拭を最優先に取り組むことが不可欠であり、堅実な対応が必要だ。
 混乱に拍車をかけているのは、来年秋に健康保険証を廃止してマイナカードに一本化する政府方針だろう。世論調査では、7割強が廃止の延期や撤回を望んでいる。マイナ保険証は別人の医療情報がひも付けされる問題が発覚している。暗証番号の管理への懸念など実用的でないとの見方は根強い。
 一本化への困惑や警戒感がある中、首相は当面は方針を維持すると表明した。同時に、点検作業を見定めて、さらなる期間が必要と判断すれば廃止時期の見直しも含め適切に対応するとも述べている。
 ただ、これは見直しありきではないと、予防線を張ることも忘れない。廃止延期には、6月に成立した改正マイナンバー法などの再改正が必要になる。政権与党内でも意見の相違があり、曖昧にしたままひとまずやり過ごしたい思惑がにじむ。
 廃止を延期するかどうかの結論は先送りしながら、保険証代わりとなる「資格確認書」の有効期限は5年を超えない期間で自治体や健康保険組合が決めると説明した。これまで最長1年としていた。
 また、申請に基づいて交付することを原則としていた方針も見直した。マイナ保険証を持たない人全員に資格確認書を発行する。不安解消へ向けた方策ではあろうが、これでは一本化する必要があるのかという疑問が向けられる。
 首相はデジタル化の推進でメリットが実感できる仕組みを作る意欲を示している。そのための対策をとりまとめるように関係閣僚に指示した。指導力が試される。
 内閣支持率は最低水準に落ち込んでいる。これまでの進め方に瑕疵(かし)があったとは受け止めていないようだが、使う側の思いに寄り添ってこなかったのではないか。そのつけが噴出している。

高知のニュース 社説

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