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2023.07.05 08:00

小社会 砂像の季節

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 砂の彫刻を「サンドアート」という。その醍醐味(だいごみ)を小欄が知ったのはずいぶん前、テレビで見たバラエティー番組。

 高知県の黒潮町チームが優勝を飾った「TVチャンピオン2 サンドアート王選手権」。2007年、舞台は千葉の九十九里浜。名所の3団体が出場。制限時間50時間。

 3人チームで一睡もせず築く。水で固めた砂の基礎は10メートル四方、高さ7メートルと巨大。蟻(あり)のように埋もれ、まずは砂の質との格闘。固まりやすいか、さらさらか。次に時間。水分が抜ける生乾きのタイミングを逃さず、風、天候、湿度を見極め、夜は照らし、精巧に細工する。作品は古代建造物のパロディーで、お茶目(ちゃめ)かつ壮大。「優勝は黒潮町」と呼ばれた時、テレビの前で泣けてきた。

 チームを率いた武政登さんは役場職員で、今は大方あかつき館長。先日会って聞いた。―あの時は感動しました。「実は審査委員長が町名を読めず、発表直前に隣と『何て読む?』『クロシオチョウ』。ひそひそ、けど丸聞こえ。だから僕ら結果を知りながらガッツポーズ」。締まらん話ですねー。

 いまや国内サンドアート界の古参だ。理想の日和は「基礎造りは大雨、彫刻は小雨。仕上げは無風の晴天で、取り壊しには豪雨がよい。これが望めるのは梅雨の中休みのある、まさに今ごろ」。

 世に残る砂像はない。最後は必ず、跡形なく消える。折々の自然と築く造形は、見た人の心に残像のみを残す。

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