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2023.06.24 08:30

望郷の思いとバイカオウレン「シン・マキノ伝」番外編④=シリーズおわり=田中純子(牧野記念庭園学芸員)

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高知県佐川町からいただいたバイカオウレン(練馬区立牧野記念庭園提供)

高知県佐川町からいただいたバイカオウレン(練馬区立牧野記念庭園提供)

 2003年4月3日からNHKの連続テレビ小説「らんまん」がスタートした。毎日午前8時からテレビの前に釘付けになっておられる方も多いのではと思う。その第1週の花がバイカオウレン。早くに亡くなる母親の好きな花という設定であった。

 牧野富太郎は「土佐の博物」5~7号(1937~39年)に3回にわたり「土佐の植物に就て旧い思い出」を寄稿した。その中に「五加葉黄連」(6号所収)という見出しがあって、次のような回想が記される。

 「此、春早く可愛らしい花の咲く五加葉オウレン一名梅花オウレンが佐川西町の上の金峰神社即ち午王様の山道、それは奥の土居の方へ下りる山道の片側の斜面に沢山生えている事を子供時代に早くから知っていたので今日此草を見ると頗(すこぶ)る懐かしい思がする。殊に其小い梅花様の白花が他の草に魁け尚時候の寒いのに関らず逸早く其葉の間に咲き綻びし其風情は決して忘るる事の出来ない思い出の印しである。そして此花の咲くと同時頃に私の宅の上の山にセントウソウの花が毎年咲くので是れも其当時それとはなしに私の視線を惹いた草であった。右の様に此五加葉オウレンが今も尚忘れ難いので佐川へ帰省すると何時でも其場所へ行って之れを眺め幾星霜も歴た往時を偲びて低回去る能わざるのである。行って見ると矢張昔のままに其処に繁殖している。一度は吉永虎馬君に頼んで其生本を東京へ送って貰った事があり又秋澤明君にもそうして貰った事があった。そして東京で花を咲せて喜んでいるのである」

 子供のころの懐かしい思い出。その花を見ると走馬灯のようにさまざまなことが駆け巡るのであろう。…

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