2023.05.03 08:38
変わる風潮 変わらぬ潮風 黒潮町Tシャツアート展盛況―ノー密!? GWこうち(1)
約千枚のTシャツが砂浜に並ぶアート展(写真はいずれも黒潮町入野の入野海岸)
薫風を受けたTシャツが青い海に映える。笑顔の家族連れや、カメラを手にした写真愛好家が浜にひしめいている。2日、黒潮町の入野海岸には県内外から詰めかけた人々の“密”があった。
同町のNPO法人砂浜美術館によるTシャツアート展がこの日開幕。国内外から寄せられた千枚が砂浜に舞う。例年、約3万人が訪れるゴールデンウイーク(GW)の恒例イベントだったが、2020、21年は秋開催への変更を強いられ関連イベントも縮小した。昨年は5月に戻したものの、イベントの一部は見送られたままで、入場者は1万8千人にとどまった。
迎えた今年。新型コロナウイルス禍は落ち着きを見せ、感染症法上の5類移行も迫ってきた。NPOはイベントの復活をさらに進め、願った。「コロナ前の水準に近づけたい。ここ3年来られていない方にも足を運んでほしい」
浜にはマスクを外してTシャツを眺める人々が続々。家族で四万十市に帰省中の会社員、水野翔太さん(29)=大阪府四條畷市=は「ここ数年は帰れなかったので、5類移行をフライングしました。天気も良くて最高」と白い歯を見せる。1歳の娘を連れた女性も「景色とTシャツがぴったり合っている」と、初夏の日差しを浴びながら大きく息を吸い込んだ。
一方でコロナの名残も。毎年訪れるという高知市の原田佳代さん(62)に声をかけると、おもむろにマスクを取り出した。「人と話す時は気を使う。やっぱりね」
マスク姿で鑑賞する人も。判断は人それぞれだ
そんな砂浜の光景をぱしゃりと撮影していたのは、徳島県石井町の写真愛好家、加藤敬二さん(66)。「マスクは表情が見えないけど、それはそれで面白い。後で見返すと、時代を感じられますから」
変わる風潮、変わらぬ潮風。Tシャツのはざまに、「コロナ後」が見えた。(幡多支社・川田樹希)
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密閉・密集・密接を避け続けた「ノー密」な日々の終わりが近づき、以前の「濃密」さが戻りつつあるGW。県内各地の風景を点描する。