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2023.04.18 08:00

【大阪のIR認定】依存症への懸念は尽きぬ

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 ギャンブル依存症の増加や治安悪化に対する地元の懸念は根強い。インバウンド(訪日客)を呼び込む核として経済効果が期待される半面、巨大事業で生じるのは期待だけではない。計画する自治体だけでなく、国にもそうした不安を払拭する対応が求められる。
 カジノを軸とした統合型リゾート施設(IR)について、政府が初めて大阪府・市の整備計画を認定した。2029年後半の開業を目指す。一方で、リゾート施設「ハウステンボス」内で予定する長崎県の計画は継続審査となり、判断時期も示されなかった。
 IRはカジノのほか、国際会議場や劇場、ホテル、ショッピングモールなどを一体整備する巨大な集客施設。安倍政権が成長戦略の柱に位置付け、18年には国内で最大3カ所の整備を可能とする法律が成立したものの、新型コロナウイルス禍などで国や自治体の準備が遅れていた。
 大阪、長崎の2地域は昨年4月に整備計画を提出。国土交通省の有識者委員会が審査していた。
 大阪府・市の計画は人工島・夢洲(ゆめしま)で、米国IR運営会社の日本法人とオリックスなどが出資する「大阪IR」が運営する。県・市が示した「日本を代表するにふさわしい」規模感や近畿圏で年間約1兆1400億円とされた経済波及効果、約11万6千人とする雇用創出効果などが評価されたという。
 ただ、これまで指摘された懸念への対応では実効性に疑問が残る。ギャンブル依存症への対応や住民との合意形成といった課題に対し、国交省は7項目の条件を付けた。
 大阪府・市は依存症対策で、診療から回復まで一貫して支援する「大阪依存症センター(仮称)」を設置するとしている。カジノを誘致する自治体の責務として求められる対策である一方、国の主体性は見えてこない。
 競馬や競輪などの公営ギャンブルやパチンコなどが身近にある日本は依存症の人が多いとされ、18~74歳の2・2%に依存症の疑いがあるとする全国調査もある。自治体任せにせず、国が率先して予防を含めた依存症対策を強化する契機とするべきだろう。
 審査を通じて、地方での実現性を疑問視する声も上がっている。経済効果が大きくなる都市部の大阪でも認定基準をようやく上回る評価だったためだ。政府はこれまで、IR構想のメリットとして「地方創生」を掲げてきた経緯がある。政府の説明が求められよう。
 IRを巡っては、担当の内閣府副大臣を務めた衆院議員(当時)が一審で収賄と組織犯罪処罰法違反(証人等買収)で実刑判決を受けたほか、事業者への賃料を決める計画地の鑑定が不当に安いと住民訴訟も起きている。
 地域の懸念も大きい上、本当に必要な事業か理解も進んでいない。さまざまな利権が絡む大事業だけに国や自治体は透明性を確保し、より慎重に対応する姿勢が求められる。

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