2023.04.11 05:00
【NATO拡大】悲劇止める対露包囲網に
ロシアのウクライナ侵攻やそのロシアに接近する中国の動きを受け、世界の安全保障環境は大きく変わろうとしている。軍事大国の中ロの脅威に対抗するには、西側諸国がより連携していく必要があろう。
ただ、こうした動きが緊張を一層高める恐れがあるのも確かだ。ロシアのプーチン大統領は先月、同盟国ベラルーシへの戦術核配備を表明している。
ロシアがウクライナへの蛮行を即刻やめるのが先決だが、NATOやそのパートナー国の日本なども自制的で慎重な対応が求められる。双方がこれ以上、対立や緊張を深めてはならない。
フィンランドのNATO加盟は、欧州の安全保障に極めて大きな意味を持つ。ロシアと約1300キロにわたって国境を接している上、ロシアの西方にあるバルト海沿岸国の一つであるからだ。
加盟国とロシアの国境の長さはこれまで、ノルウェーやバルト3国の一部などを合わせ約1200キロだった。それがフィンランドの加盟により、2倍以上になる。
バルト海でもNATOによるにらみが利くようになり、ロシアには相当な圧力だろう。最近のロシアの反発ぶりがそれを示している。
もちろん、ロシアが自らまいた種である。ウクライナ侵攻が欧州各国に強い衝撃を与えた。
特にフィンランドは、旧ソ連に2度にわたって攻め込まれた歴史がある。約10万人が犠牲になり、領土の約1割を奪われた。第2次大戦後は軍事的中立を保ってきたが、ウクライナ侵攻によって方針転換を余儀なくされたといってよい。
ロシアは自らの首を絞めていることを深く認識すべきだ。今後、同じ北欧のスウェーデンも正式加盟すれば、NATOの力はさらに強まるだろう。
ロシア包囲網はアジア太平洋地域にも広がっている。
ウクライナ侵攻後、NATOは首脳会議や外相会合に日本や韓国、オーストラリアなども招き、連携を強めている。太平洋側にも国土が広がるロシアや、覇権主義的な動きを強める中国の脅威を考えれば、日韓などにとってもNATOと手を組むことは心強い。
だが、ロシアの反発は日増しに激しくなっている印象だ。今後、NATOの加盟国、パートナー国に、より強い対抗手段を打ち出してくる恐れがある。NATO内で、主力戦車のウクライナへの供与が進んでいる現状ではなおさらだ。
つばぜり合いが激しくなればなるほど、一触即発の危険性も高まる。悲劇を拡大するのではなく、止めるための包囲網にしなければならない。NATOにも日本政府にもその決意が求められる。