2023.02.26 08:32
【危惧】子どもは置き去り?―部活の行方 高知の地域移行を考える(3)
生徒のいない中学校体育館。部活動を地域に委ねることになれば、週末、子どもたちの姿が消える学校が出てくるかもしれない
2020年の冬。県中部の中学校で球技の顧問を務める30代の男性教員は、部活の地域移行について書かれた雑誌記事を読んで、衝撃を受けた。翌春には、学校長から「部活動を教員が持たない流れが来る」と伝えられた。県外の遠征先でも話を聞くようになった。
国が部活動の在り方について検討を始めたのは、大阪・桜宮高生の体罰自死などの「ブラック部活」問題が明らかになった13年。「地域移行」は足かけ10年の改革だ。
スポーツ庁の方針は、23年度から土日の移行を進め、将来的に平日も含めた「完全移行」を目指すというもの。「子どもの選択肢を増やす」「教員の長時間労働軽減」―。掲げる看板に一理はあるが、当初、打ち出した達成目標は3年。周りの教員も「急ぎ過ぎ。地域に託す体制が整うとは思えない」。国の青写真に現実味を感じなかった。
疑念拭えず
男性教員は、生徒指導や競技団体の役員も務める。部活指導は国のガイドラインに沿って週5日。大会などのない土曜は自身のリフレッシュに充てている。
部活は教育の一環で「人間形成がテーマ」と捉える。将来を見据え、心身の成長を応援することが目的だ。それができるのも、生徒と顔を突き合わせ、信頼関係を醸成し、個々の特性を知って指導すればこそ。「完全移行」となれば、その根本が崩れかねない。
「子どもが置き去りの改革ではないか」との疑念が拭えない。部費や遠征費、用具費を工面する余裕のない家庭もある。「金銭面も含めて地域が受け皿になれるのか。部活を続けたくても続けられない生徒が出てくる」と懸念する。
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