2023.02.17 08:20
積極型 コロナ後へ構造転換狙う―「成果」求めて 2023年度 高知県予算(1)
「成果を県民に実感してもらいたい」。記者会見で予算案を説明する浜田知事(15日、県庁)
「私自身が思い描く、高知県のあるべき姿の実現にはまだ道半ば。今年は徹底して成果にこだわる」
浜田省司知事は年頭所感でこう抱負を述べ、4回目の予算編成に臨んだ。
5年ぶりのマイナス編成となったものの、22年度2月補正の物価高騰対策を含む「実質的な当初予算」はほぼ横ばいの4802億円。定年延長による退職手当の減少といった大きなマイナス要因を考慮すれば、積極的な財政出動を図ったと言える。
■足腰強化図る
編成過程では、税収や地方交付税の見通しはほぼ想定通り。財源確保には比較的頭を悩ませずに済んだ。
さらに22年度2月補正で地方交付税などの増額があり、財政調整的基金の取り崩し(78億円)を回避できることに。それによって「基金を使う『攻め』か、将来にためておく『守り』かの選択肢が生まれた」(財政当局)。
元総務官僚で地方行政に精通する浜田知事は「理想は最少の経費で最大の効果。予算を積むことが目的ではない」との考えの持ち主だが、選んだのは「攻め」。10年度以降で最大となる財源不足額164億円を許容し、施策展開を図った。
コロナ対策に追われた「守勢」の局面から出口が見え始めたタイミング。浜田知事は「コロナ後や物価高騰の長期化をにらみ、県勢浮揚に向けた足腰強化へ戦略的に目を配りたかった」と説明する。
庁内外では「知事が『成果』『成果』と口にする機会が増えた」との声が上がる。行政トップが成果にこだわるのは当然だが、あえて言葉にする背景には、自身が掲げる「共感と前進」の県政運営を思うように進められなかった焦りやもどかしさも見え隠れする。
■実感あってこそ
政策面では、デジタル化、グリーン(脱炭素)化、グローバル化の3本柱を「アフターコロナ時代の成長の原動力」と位置付け重点化を進めた。
強く意識したのが社会経済の「構造転換」だ。
デジタル化では前年度比4億円増の34億円を充て、産業だけでなく、中山間地域での生活向上などにも拡充。再生可能エネルギーの導入や省エネの促進、脱炭素に対応する製品の研究開発支援などグリーン化は13億円増の71億円を盛った。
担い手不足と地理的ハンディを抱える本県。浜田知事には、コロナで変容する社会から取り残されていると県勢浮揚はままならないとの危機感がある。コロナ拡大の影響を緩和する“対症療法”に代わり、コロナ禍の中で開発や普及が進む先進技術、見直された自然資源を生かした施策展開で「暮らしや働き方が一変する社会」を目指す。
15日の記者会見で「未来への弾みとなる年だったと後々評価してもらえる1年にしたい」と語った浜田知事。ただ、構造転換は民間の機運醸成があってこそ。成果が実感され、「共感」が広がらなければ「前進」もない。庁内外での“旗の振り方”が問われる。(報道部・井上智仁)