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2023.02.11 08:00

【マスク新指針】摩擦回避へ説明を重ねて

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 マスク着用は屋内外を問わず個人の判断に委ねるとした政府の基本方針に戸惑う人が多いということだろう。新型コロナウイルス感染症の流行は当面続くと考えられる。対策と根拠の丁寧な説明が欠かせない。
 政府はマスク着用の新たな指針を示した。新型コロナの感染症法上の位置付けは「5類」に移行する方向で、コロナとの関わり方が変わってくる。共生をいかに進めるのかは課題で、日常生活と密接に関わるマスクの位置付けも重要だ。
 指針は3月半ばから外すことができる場面として、全員の着席が可能な新幹線や高速バスを挙げた。一方、混雑した電車やバスに乗車する時などは着用を推奨する。
 着用はほかにも、本人に症状がある場合や家庭内に感染者がいる場合、医療機関や高齢者施設の訪問などで呼びかける。高齢者ら重症化リスクが高い人が混雑した場所に行く場合も効果的とする。着用が必要とされる事例はこれまで通りで、さほど違和感はない。
 一方、学校教育活動では4月の新学期から体育や合唱時を含め着用を求めないことが基本となる。文部科学省は、着用希望には適切に対処し、また脱着を無理強いすることがないように全国の教育委員会などに通知するようだ。誰もが納得する方向性を示すことは困難だろうが、判断を尊重する姿勢が求められる。
 最近は特に、3月の小中学校などの卒業式での扱いに関心が高かった。児童生徒や教職員は着用せず、保護者らには求めるという。
 卒業式でのマスクの脱着については永岡桂子文科相が先に、家庭の判断で外しての参加が可能と答弁しながら、決めていないと修正する場面があった。保護者や教員の関心が高く、さまざまな意見がある問題だ。こうした方針のぶれは施策の信頼に関わりかねない。
 岸田文雄首相は、「卒業式ではお互いの笑顔を見ながら参加してほしい」と述べた。そのためには方針を十分に説明し、判断を押しつけることがないよう注意が必要だ。
 日本では感染が始まった当初から、基本対策としてマスク着用が呼びかけられた。在庫不足が社会問題化する局面もあったが、着用は広く浸透している。
 政府は知見の蓄積などを受けて、周囲との距離が十分に確保できなくても会話が少ない場合には着用は不要とする見解などを示してきた。だが感染への警戒感は根強く、マスク姿がまだ一般的なのが実情だ。
 一方で流行が長期化し、日常を取り戻したいという思いもまた強まっている。米欧ではマスクを義務化した国もあったが撤廃が進んだ。映像はマスクなしの光景が当たり前で、対策の違いが意識される。
 日本でも社会経済活動の本格的な再開へ向け動いている。歓迎の声とともに警戒感も根強い。感染拡大の繰り返しが危惧されるだけに、対策に幅広い理解がなければ摩擦が生じかねない。マスクの「出口戦略」にも細やかな対応が不可欠だ。

高知のニュース 社説

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