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2023.02.10 08:49

強い仲間愛、走りに凝縮 陸上・香長中女子 全国中学校駅伝8位―高新スポーツ賞の顔(1)

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全国中学校駅伝で県勢女子初入賞を果たした香長中メンバー。「走っている人だけじゃなくて、全員で取った入賞」との思いは、チーム内で一致している(南国市の香長中=森本敦士撮影)

全国中学校駅伝で県勢女子初入賞を果たした香長中メンバー。「走っている人だけじゃなくて、全員で取った入賞」との思いは、チーム内で一致している(南国市の香長中=森本敦士撮影)


 「栄光を讃(たた)える」と大きく書かれた全国中学校駅伝の表彰状。8位の香長中が手にしたそれは、第30回大会にして、県勢女子が初めて入賞した、まさに栄光の証しだ。

 そこには5区間の走者だけでなく、補欠3人の名前も記されている。川添優理はその一人。3年生で唯一、コースの外からレースを見届けた。

 最も近くにいた川添が感じるチームの力。それは「みんな負けん気が強い」ことと、「仲間への信頼がある」。そう、新たな扉を開いたチームにあったのは、強い気持ちと、強い仲間愛だった。

 ◇   ◇ 

 歴史を刻んだあの日。滋賀県の小高い丘にある周回コースには、12月の冷たい風が間断なく吹いていた。1区の谷渕結夏は体を冷やさないよう、しきりに手足を動かして、号砲を待った。

 チームで一番速く、一番よく笑う。谷渕は皆が認めるエースで、ムードメーカー。だから「1区でうまくいけば、流れに乗れる」と傍士拓真監督は見ていた。

 風は強い。「先頭を走った子はどんどん落ちていくはず。最初は抑えめで」。それが監督が示した作戦―のはずだった。だが、谷渕は「調子が良かったので、先生の言うこと聞かずに、どんどん前に出ちゃいました」。

 結果的にその心意気で良かった。実際のところ、谷渕は前方に飛び出したわけではない。前半は20位前後でレースを進め、後半で次々と前のランナーを捉えて7位でリレーした。強気にスタートしなければ、もっと後方での展開となり、1桁順位は無理だっただろう。

 全国舞台で輝く谷渕を見て、同学年の川添は誇らしげだった。「結夏は夏に体調を崩したけど、だからこそ強くなった。元から強いですけど、絶対取り返してやるって」

 後輩たちも気後れしない。3区の2年生、宮下祥子はタイムが伸びない時期を乗り越え、4区の高松和帆は1年生ながら激しい部内競争を勝ち抜いた。だから、つかみ取った枠で堂々と走った。

 5区の穂岐山実結もけがからの復活を遂げた。「夏にタイムを出せなかった悔しさをぶつける」と誓った2年生アンカーは、二つ順位を上げて、入賞ラインに乗せた。

 「みんな去年(14位)よりいい順位とか1桁狙おうとか言ってたけど、実結だけ『8位で走る』って。多分、思いが強かったんですよ。そしたら本当に8位」。頼もしくなった後輩を、川添はうれしそうに見詰めた。

 ◇   ◇ 

 最も川添の心を震わせたのは、2区だった。主将の北川あかりが谷渕から7位でたすきを受けると、「絶対に結果を出そうと思って、最初から前に突っ込んでいった」と強豪校のランナーを次々と追い抜き、なんと3番目に競技場に戻ってきた。そんな姿を見て川添の目から涙があふれた。

 「あかりは主将になって悔し泣きをめっちゃ我慢してたんですよ。タイムが伸びない時は苦しんで、陰で頑張るって言いながら、涙をこらえてるのを知ってたんで。あーやっと実ったなって」

 レースを走れなかった川添の言葉には悔しさがみじんもなく、ただ、仲間への思いであふれた。

 「だってキャプテンがいつも言ってくれるんです。『支えてくれてありがとう』って。言葉にしてくれたら余計うれしくて。このチームで良かったなと思います」

 栄光を生んだたすきには、走ったメンバーだけでなく、部員全員の気持ちと愛がぎゅっと込められていた。(仙頭達也)

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