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2023.02.03 08:00

【電力不正閲覧】また消費者の信頼損ねた

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 公共性の高い電力事業を担う資格があるのか。そう疑われても仕方がないようなコンプライアンス(法令順守)意識の低さをさらした。システム的な再発防止策はもちろん、企業体質の刷新にも踏みこんでいく必要がある。
 大手電力6社が、競合関係にある新電力の顧客情報を不正に閲覧していた事例が相次いで分かった。
 昨年末、関西電力で発覚。事態を重く見た経済産業省の電力・ガス取引監視等委員会の点検要請で、ほかに四国電力を含めた5社でも判明した。いずれも、送配電事業を手掛けるそれぞれの子会社のシステムを通じ、社員が閲覧していた。
 2016年の電力小売り自由化後、大手電力は送配電部門を分社化し、新規参入した新電力もその送配電網を使えるようにした。送配電会社は、公正な競争のために中立が求められ、管理する新電力の顧客情報に親会社の大手電力がアクセスすることは原則、禁じられている。
 しかしシステムに不備があり、新電力の顧客情報が閲覧されていた。「盗み見」と表現してよい。大手側は「顧客の問い合わせに対応するためだった」などと釈明するケースが多いが、関電は新電力の顧客情報を自社の営業活動にも使っていた。
 調査の範囲が広がるほど件数は増えており、関電は昨年4~12月、千人余りが計約4万件の契約内容を閲覧していたという。
 大手の立場を都合よく使い、公正な競争、市場のルールをゆがめていたことになる。新電力にすれば、たまったものではあるまい。無断で情報を見られた顧客もいる。個人情報保護の面でも問題がある。
 閲覧が法令違反に当たるのは、考えればすぐ分かることだ。実際、問題があることを自覚していた閲覧者も少なくない。にもかかわらず横行したのだから悪質さが際立つ。
 健全な競争環境をつくり、顧客の満足度を高めるという電力自由化の趣旨を軽んじる空気が大手電力にあるのではないか。長い地域独占状態で生じた、旧態依然とした体質を指摘されても仕方あるまい。掘り下げた原因究明が必要だ。監視委には厳正な対応も求められる。
 関電など大手4社は、企業向け電力販売でもカルテルを結んでいた。互いに他社の区域で営業を控え、料金を不当に高止まりさせたとして昨年、課徴金を命じられている。
 電力自由化の趣旨を軽視し、消費者の信頼を損なう不祥事が続く。
 一方で大手7社は現在、燃料代の高騰などに伴い電気料金の値上げを経産省に申請している。四電が先ごろ開いた公聴会では、相次いで出た消費者からの反対意見に対し、四電側は「最大限のコスト削減努力をしている」と理解を求めた。
 不祥事と料金改定に直接的な関係はないかもしれない。だが、規律を守らない企業が経営努力を訴えたところで、消費者がすんなり納得できるだろうか。不正のあった大手電力は、どうすれば信頼を取り戻せるか考えていくべきだ。

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