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2023.01.12 08:00

【中国ビザ停止】十分な情報開示が先だ

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 新型コロナウイルス感染症を巡り、中国の強引な政策転換が招いた混乱がさらに摩擦を強めている。各国が水際対策を強化することに対抗措置を打ち出した。これでは混迷を深めるだけだ。コロナ後をにらんだ人的往来の正常化へ各国と協調する姿勢が求められる。
 中国は、日本と韓国で中国に渡航するビザ(査証)の発給手続きを停止した。停止期間は判然としない。日本からの進出企業や旅行業界への悪影響が懸念され困惑が広がる。
 中国はロックダウン(都市封鎖)など、徹底した感染の抑え込みを行ってきた。しかし、厳しい行動制限に反発が強まり、「ゼロコロナ」政策は事実上崩壊した。
 外出制限の大幅緩和で感染が爆発的に拡大している。医療崩壊も危惧されるが、当局は感染者数の詳細な把握を取りやめている。落ち込む経済の回復へ向け、感染症克服を印象づけたい思惑が指摘される。今月8日には感染症分類のレベルを引き下げ、海外との往来の大きな障害となっていた入国者の強制隔離義務を撤廃している。
 これに対し、各国は中国からの入国者への検査強化などを迫られた。日本政府は昨年末に、感染急拡大に伴い中国本土からの直行便での渡航者らに入国時検査を義務付けた。
 今月8日には陰性証明の提示を義務化し、入国時検査を厳格化する臨時措置を始めた。情報が十分に公開されず、国内も感染「第8波」にある以上、無防備ではいられない。
 こうした動きを中国は、科学的根拠に基づかない差別的な入国制限措置と位置付ける。断固反対し、対等の措置を取ると主張している。
 自国がゼロ政策を終了したにもかかわらず、他国が閉鎖的と受け取れる対応を取ることは許し難いようだ。だが各国の対応の背景には、中国の政策が唐突に転換され、情報開示の在り方が不十分なことがある。まずは自国の姿勢を顧みることだ。新たな変異株出現への警戒も怠ることはできない。
 水際対策を強化しているのは日韓にとどまらない。それにもかかわらず日韓に強硬な対応を取るのは、現在の関係の反映だろう。だが、日本は新型コロナの検査は強化しているが、入国そのものを禁止してはいない。中国のビザの発給手続き停止はより影響の度合いが強く、安心して行き来しやすい環境の整備を意図しているとは思えない。
 感染防止対策と経済社会活動との両立はどの国も望むことだ。そのバランスをどう取るかは国によって違いがある。それを調整しながら良好な関係を築くことが重要となる。厳しい措置を振りかざすだけでは身勝手のそしりは免れない。措置の早期撤廃を求めたい。
 低迷する経済の活発化を狙う中国も混乱は回避したいはずだ。日中間の往来の本格化が期待されるが、やはり科学的判断が優先される。そのための条件を整えることが必要となる。さらなる関係悪化を回避するために冷静な対応が欠かせない。

高知のニュース 社説

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