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2022.12.29 05:00

【2022回顧(上)】民主主義の危機が続く

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 「聞く力」という看板はメッキがはがれ、「説明責任」「丁寧な説明」は空疎な常套句(じょうとうく)になってしまった。それが岸田政権の2022年ではなかったか。
 7月の参院選までは、世論が分かれる議論を避けて安全運転に徹し、高支持率を維持した。自民党は参院選で、共闘関係が薄れた野党を相手に大勝し、岸田文雄首相は大型国政選挙が予定されない「黄金の3年間」を手にした。
 これがおごりにつながったのだろうか。以降、国の将来を大きく左右するような方針を、国会論戦や国民的議論を経ずに決定した。
 最たるものが防衛政策だ。緊迫する安全保障情勢を背景に、「専守防衛」を逸脱しかねない反撃能力(敵基地攻撃能力)を保有するという歴史的な転換を決めた。防衛費の大幅増と増税方針も形にした。
 エネルギー政策もそうだ。歴代政権が「依存度を可能な限り低減する」としてきた原発で、運転期間延長と新増設にかじを切った。
 本来なら選挙で正面から訴え、合意形成に丁寧に努めるべき問題だ。これでは「官邸1強」の下、民主主義の手続きを軽んじた安倍、菅政権と変わらない。首相は党総裁選時、「わが国の民主主義が危機にひんしている」と路線修正を示唆しただけに、批判が出るのは当然だ。
 参院選遊説中に銃撃された安倍晋三元首相の国葬開催もまた、唐突な決定だった。事件は衝撃的だった。もちろん暴力は許されない。だがそれと国葬の是非は別の話だ。世論の大きな分断を招いた。
 熟議が必要なことを独りよがりで決める一方、決めるべき時に踏み込めなかった。銃撃事件で浮上した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題への対応は鈍かった。臨時国会中と年末に閣僚合わせて4人が辞職した「辞任ドミノ」でも、更迭の判断が後手に回った。
 経済政策では、看板の「新しい資本主義」で訴えた分配重視の政策は具体化されず、「資産所得倍増プラン」という異質な政策にすり替わった。物価高を受けた経済対策は規模が先行し、富裕層も恩恵を受ける「ばらまき」の面も否めない。
 一連の取り組みに対する評価は、30%台に急落した内閣支持率に表れる。批判をしっかり受け止めなければ、政権再浮揚はあるまい。
 政治不信という点では、旧統一教会と自民党の関係が焦点化した。いまだに核心的な部分は手つかずで、政治がゆがめられた疑いは残る。
 閣僚の辞任ドミノは、国会議員の劣化をうかがわせた。その一因にもなった「政治とカネ」の問題も相変わらず続いた。自民は組織の問題として危機感を持つべきだ。
 野党第1党の立憲民主党は参院選の敗北を受け、提案路線から対決路線に切り替えた。勢力を伸ばした日本維新の会とは対立することが多かったが、両党は臨時国会から共闘関係を築いた。国会に緊張感が出始めたのは事実だが、より熟度を高めていく必要があるだろう。

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