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2022.12.22 05:00

【日銀緩和修正】副作用は無視できない

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 金利は上げないとしてきた従来の路線の転換となる。大規模緩和がもたらした副作用が大きくなり、修正を迫られた形だ。見直しに伴う弊害も想定され警戒が怠れない。
 日銀は金利を極めて低い水準に抑え込む大規模な金融緩和策の縮小を決めた。事実上の利上げだ。
 長期金利の上限を従来の0・25%程度から0・5%程度に引き上げる。長短金利の誘導目標は維持した上で、容認する長期金利の上限と下限をいずれも広げた。
 これを受けて市場では、円はドルに対して急伸し、4カ月ぶりの円高水準を付けた。日本国債は売りが広がり長期金利が急上昇した。
 黒田東彦総裁はこれまで、長期金利の上限引き上げは利上げとの認識を示し、金融緩和の効果を阻害すると述べていた。ところが今回は、利上げではないと見解を一変した。この説明は分かりにくい。
 市場では、来年4月の新総裁就任まで日銀は政策を変更しないと見込んでいたこともあり、大きな驚きが広がった。唐突な政策の修正は戸惑いを強め、混乱につながる。政策への信用をゆるがせることにもなりかねない。市場と対話する努力を続けなければ、変更を好ましい結果に導くことは困難になる。
 米欧などの中央銀行は新型コロナウイルス感染などによる景気対策からインフレ抑制へとかじを切り、大幅な利上げを繰り返してきた。日銀は2%の物価上昇目標に縛られて身動きできず、金利は金融緩和で極めて低い水準に抑え込んだ。
 上昇局面にあるドルとの金利差が意識され、急激な円安を招いて輸入物価の上昇につながった。大量の国債購入での金利抑え込みは市場の機能をゆがめていると批判された。
 黒田氏は2013年の総裁就任後、デフレ脱却を目指して大規模な金融緩和を打ち出した。しかし政府と日銀の物価上昇目標の安定的な達成には至らなかった。
 消費者物価はウクライナ侵攻の影響もあり、最近は3%台が続く。10月は前年比3・6%上昇と40年ぶりの伸び率となった。これに対し黒田氏は、世界的な資源高が落ち着けば再び2%を下回るとの見方を示し、政策変更を否定してきた。
 緩和策の修正で、歴史的な物価高の一因となっている過度な円安の是正が期待される。その一方で、利上げは回復が遅れる日本経済へのマイナス要因ともなる。企業の借り入れや住宅ローンの金利が上昇する可能性がある。景気が低迷するようなら、賃上げをともなった物価上昇が遠のく恐れがある。
 国の長期債務残高は2021年度末で1千兆円を超えた。社会保障費の増加や新型コロナウイルス対策で財政支出が膨らんだためだ。日銀の金融緩和で利払い費を抑え込めたため、財政規律が緩んだとの見方もある。今後、引き締めに転じると利払い費は増大し、政策に振り向ける予算が限定されかねない。
 金融政策の正常化へ、出口戦略は細心の注意が必要だ。

高知のニュース 社説

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